Love and Tire

□バレンタイン
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深夜2時に鳴った電話。


『じゅんくぅ〜〜ん』



ああ、またか。



『よっぱらっちゃったあ』


しっかり者で毒舌なこいつは
普段は家でゆっくり飲んで自分で考えたゲームをひとりでやって楽しむやつなんだけど。




たまーに、こうなる。



『ひっく…』



「今日はなんでこんなに飲んだの?」



閉店した店の前でキャップを目深に被り座り込んでいる顔を覗き込む



『なんでも…ないのっ…っく』



ふぅ、



一息ついてから女の子みたいな腕を掴み、抱き抱える


「ほら、帰るよ」



『やぁ、』



ぽいっと靴を脱ぎ捨てて、俺は帰りませんアピール



いつもは迎えに行ったら素直に帰るのにな。



「どした?」



もう一度、ゆっくり聞き直す



『ん…じゅんくんが…』



俺?俺か。
何したっけな。

今日は5人で仕事して、俺は打ち合わせがあったからその後局に残って…

普通に打ち合わせして帰っただけなんだけど



「俺が?どした?」



『……なんでもないのぉ…』



またしゃがみこんでしまった、かずの目の前でうろたえる。




どうしたもんか。


『じゅんくんの、ばかぁ』



「ごめんな、なんで怒ってんのか教えて?」



『きょぉ…はっ……なんにち…』



今日?


今日は…2月15日の深夜3時を過ぎた頃だ。



……あぁ、そうか。



「昨日はバレンタインだったな…」


小声でぼそっと呟くとかずはキッと目を上げ、



『女の子から、もらってたの、みた』



なんて膨れっ面で言うもんだから思わず口元がにやける



「見てたの?」



『…うん。ばいばいっていいにいこうとしてね、おれもっ…ちょこね、あげようとおもってね、』


ろれつの回らない口でゆっくりそこまで言葉を紡いだ後、また下を向いてしまった



「ごめんな?あの人、みんなに配ってたんだよ。俺だけじゃないよ」



『や、だったの』



「うん」



『おれだけでいいのっ……ひっく…』


酔っ払ってなのか、泣いてるのかよく分かんないけど、そんな姿が可愛かった
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