Honey Jiro Book

□あいつを負かせば
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ジローとは、氷帝幼稚舎からの仲だ。今でも大親友。
幼稚舎時代、ジローと岳人と俺の三人は学校の近くのテニスコートでよく遊んだんだけど、あいつは全然練習してないくせに、俺は全然勝てなかった。
あいつにとってテニスは放課後のお遊びでしかなかったみたいだけど、俺は割とマジでやってたのによ。もともと運動神経はいいからな、あいつ。

中等部に上がって、俺達に合わせるようにテニス部に入部したあいつだけど、うるせえ岳人と、目つきの悪いロン毛、ジローは金髪だし、更に天才忍足(笑)とか言うのも仲間に加わって、そりゃあもう浮きまくりだった。
あいつはやっぱりボーッとしてるように見えるから、途端にコワイ先輩に目をつけられやがって、先輩に直々にテニスを教えていただける事になった。
勿論先輩はジローを試合でボコボコにする目論見であったワケだが、さすがジロー、何とそれに勝っちまいやがる。笑える。
そしたらマジで声を上げて笑ってやがった偉そうな俺様に、ジローが気に入られちまった。俺はその俺様が大っ嫌いだったから、実はその事実があまり気に入らなかった。でもジローはやっと、テニスが面白いって分かってきたようだった。

油断してたら、部活後、あの日負けた先輩が何人か固まって部室の倉庫の奥でジローをボコボコにした。
俺は何とかジローを見つけ、マジギレしながら追っ払った。生きてて一番怒った日かもしれない。ジローは蹴られたり殴られたりしてたけど、骨やら何やらは無事だった。
その後ジローが家に帰ってないのを知り慌てて捜しに来た岳人と忍足と合流し、その日は四人でぎゅうぎゅうになりながら、一人暮らしの忍足の家に泊まった。
どんちゃん騒いで結局楽しく終わっちまったが、「えへへ、今日はみんながいて良かったC!独りだったら絶対泣いてたもん。ありがとね」とか最後にジローが言うもんだから、泣くのをこらえるのに必死になってしまった。
まあこの話はいつか詳しく教えてやる。

それより、俺が心配したのはこんな事があってジローがテニスを嫌いになっちまったんじゃないかって事。
現にあいつが本気になることが滅多になくなっちまったから。まだ一年生が始まったばかりなのによ。

「マジマジ、テニスが楽Cって分かったC!!」
俺の心配をよそに突然そんな事を言ってくるから、何があったか聞いてみると、どうやらあの俺様と試合をしたとか。まさか勝っちまったのかと思って結果を聞くと、負けたって満面の笑みで言ってくる。ドMかよ。本気で試合が出来たってすごく嬉しそうに言ってくる。不覚にも、跡部って良いやつなんじゃ、と思ってしまったね。あいつらますます仲良くなるな。

そして秋の新人戦。
またジローが負けた。
その後の跡部の悔しそうな顔が面白すぎて、今でも鮮明に覚えてる。



そんな事を考えていたら、授業終了のベルが鳴ったな。
そんな訳なので、横で眠りこけてるコイツを起こして俺はさっさと部活に行くぜ。今日こそこいつを倒してやる。
じゃあな。

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