10/31の日記

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マユミ:あなたの魅力を心に刻む
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ジュビアの気持ちには気付いていた。
けれど気付いていない振りをして、自分に向けられる好意に浸っていた。

だから、「ハロウィンパーティーに一緒に行きませんか?」という誘いにも、
本当は満更でもない癖に決めかねた風で答えを焦らして、内心でジュビアの反応を見て楽しんで、
嬉々としている心を悟られないように、「特に予定も無いしな・・・」なんて口にして、最終的に誘いに乗るつもりだったのに、
迷っている素振りのその一瞬の隙をついて、ルーシィが口を挟んできた。

「そんなに迷うんだったら他の人誘ってみれば?ジュビア。ジュビアと仲良くなりたい人なんて他にもたくさんいるんだし」

そんな事を言いながら俺を横目でちらりと一瞥するあたり、こっちの手の内はバレバレで。
なんだかんだジュビアと仲が良く、聡明なルーシィのことだから、それを逆手にとって『健気な彼女を弄ぶな』と釘を刺したいのだろう。
しかもわざとらしく小声で、だけど俺に聞こえる様に、
「強引にいくばかりじゃなくて、たまには引いた方が効果あるかもよ?嫌々さそって嫌われたくないでしょ?」とジュビアに耳打ちするものだから、
つい俺も意固地になって、間違っても「誘いに乗る」という選択肢は選べなくなった。

これがエバーグリーンとエルフマンなら、ツンデレ結果オーライで良かったかもしれないが、
ジュビアもジュビアで素直な事だから、ルーシィの悪魔のささやき(俺にしてみれば)にまんまとハマり、
俺に気を遣い始め、しまいには、「そうですよね。グレイ様、無理に誘ってスイマセンでした」と深々頭を下げ、ギルドを出て行ってしまった。

ぐっ!と口ごもり言葉も出ないその時の俺の顔は、きっと誰が見ても間抜けだっただろう。
勢いよく振り返ると、後ろで小生意気な表情を浮かべた金髪が、視線を明後日の方に向けている。

「お ま え な〜」
「何よ、グレイ。ハロウィンパーティーなんて気乗りしてないんじゃなかったの?」
「誰も、行くとも行かないとも言ってねえだろ」
「へ〜、そんなこと言うんだ。ああ見えてジュビアって実はモテるから、邪魔な誰かさんが居なくなったら、今日のパーティーに誘いたいって人が出てくるかもね。そういえば良く行く花屋のお兄さんも、ジュビアを街で見かけて可愛いって言ってたな。今度紹介して欲しいって」
「?! さてはロキの入れ知恵だな!!!!」

含みを持たせた言い方に俺は、陳腐な優越感を満たそうとしていた事を見透かされた気恥ずかしさから、
思わず声を上げてしまった。
この一連の背後に、あの人をおちょくった様なオレンジ頭の星霊が見え隠れした気がしたが、
ルーシィはそれを冷ややかに否定し、やけに力の籠った目をこちらに向けた。

「ていうかそんな悠長にしてていいのかしら?」
「何の事だよ」
「ちなみにその話の花屋、ここから女子寮に帰る道なりにお店があるんだけど。早く追いかけないと、本当にジュビア取られちゃうかもね」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

女って生き物は敵に回すと怖いなと、にやりと笑うルーシィに俺は悪寒を覚ながら、自分のジュビアに対する意地の悪さに少し反省した。

そうだよな。
恋愛なんて柄じゃなかった俺が、こんなに惹かれてるんだ。
他の奴がジュビアに惚れたって不思議はない。
好かれている事に胡坐をかいていれば、いつか足元をすくわれるだろう。

まるでルーシィの思惑通りに事が進むのが、わずかに不本意だったが
それでも彼女の言う事が現実にならないように願いながら、俺は急いで寮へと続く大通りへの近道をぬけた。

ジュビアに追いついたとして、この後一体どうやってジュビアをパーティーに誘いなおそうか。

そんなことを考えながら、俺は必死に視界の中に水色を探す。

〜終〜

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