□人によって変わる感情
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俺とジュビアは、ミラに頼まれた買い物をするべく、様々な店の並ぶマグノリアの大通りに来ていた。

最近のジュビアは、前にもまして、人の目を引くらしい。
確かにファントム時代もそこそこ整った外見だったかもしれないが、
フェアリーテイルに来てから、・・・いや、7年の時を経て、天狼島から帰ってから
それが顕著に表れて、前よりも様々な表情を垣間見る気がする。

服装も、ジュビアの可憐さを引き出すような可愛らしいものを身につけるようになって、
すれ違う男達が、通り過ぎて、後ろを振り返ってまでジュビアに視線を送っている。
だが当の本人は、相変わらず自分に向けられる好意に鈍いらしく、そんなことにも気付かず、花が開いた様な笑顔を俺に向ける。

そんな特別な状況を、喜ばない男がいるだろうか?
町を一緒に歩いている時の、この優越感。

視線を送ってくる男達は、皆この自分のポジションを羨んでいるのに、
ジュビアの目に映っているのは、いつだって自分だけ。

そして、ジュビアにこんな表情をさせられるのも、自分ただ一人。

のはずなのに・・・

「ジュビア!こんなところで会うなんて、俺はなんてツイているんだ。やはり俺達は運命の赤い糸で結ばれているに違いない」
「はう!!リオン様!!」
「な!!!リオン、なんでここに!!」

突然呼びとめられ振り向けば、うっとおしい兄弟子の姿。

「仕事でこの先の町に用があってな。そしたらついでにうちのオババから、ここの焼き菓子を頼まれたんだ。この店はカフェも併設されているらしいな。さあ、ジュビア。好きな物を頼むといい」
「え?え?リオン様?!」
「だから勝手に連れてくんじゃねえ!!俺らも頼まれ物の買い物の途中なんだよ!」

ジュビアの腰に手を添えて、ナチュラルに店内へ入ろうとするリオンを、俺は肩を掴んで止める。

「ならばジュビア、終わったら待ち合わせをしよう。それなら構わないだろう、グレイ」
「えと、えと、ジュビアは、その・・・あう〜」
「悪かったな、ジュビアはこの後も出かける用事があんだよ。一生一人で待ちぼうけてろ!じゃあな!」

俺は、顔を赤くして眉をひそめ、リオンの誘いに困った様子のジュビアの手を引くと、
足早にリオンの見えないところまで歩き去った。

「あの、グレイ様、ジュビアこの後特に用事は無いのですが」
「あ?あんなん適当にあしらうのに言っただけだ」
「でも、ジュビア嘘はちょっと・・・」
「ならもうちょっと、上手くリオンの事かわせよ!なんでもあんだろ、理由なんて。とにかくアイツにそんな顔見せんな!」

そんな顔とはつまり、こいつが普段ぐいぐいアピールしてくる俺には見せない、恥じらった女の顔。目の潤んだ困り顔。
自分で言ってて呆れるけれど、リオンに対しては、他の男とも、俺とも違うジュビアの対応に、
さっきまでの余裕はどこへやら。

「嘘が嫌なら、これからは俺の事言い訳に出せよ。さっきのだって、この後ホントに出かけちまえば問題無いだろ?」
「それって、デデデ、デート?!!!きゃ〜!」

普通ここまで言えば、俺の気持ちに気付いてもおかしくないのに、
相変わらず鈍感なジュビアは、「夕陽の見えるレストランでプロ―ポーズかしら」とか「ジュビア今日可愛い下着でよかった・・・」とか、
また一人で勝手に脳内妄想に入ってしまう。
そんなん言われて、ホントにする奴がどこに居る。
俺の言い方も女々しいと言われればそれまでかもしれないが、こいつのこの癖と、鈍感な部分が直らないと、この先色々困るんだが。

とにかく、リオンが絡むと、俺の優越感は、独占欲という名前に変わるらしい。
けどそれで、ジュビアの喜んだ顔が見れるなら、リオンも少しは役に立つかもな。
暫くは、この関係も悪くない・・・か?

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