□リオンの暴走
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試合終了後医務室へ運ばれたルーシィだったが、なんとか命に別条はないと分かり、
水着のままだったジュビアは、一旦着替えるため、一人闘技場の廊下を歩いていた。

と、そこへ、先ほどの試合を見てジュビアのファンになった男達が通りがかり、
ジュビアの周りを取り囲んでしまった。

「ジュビアさんって、かわいい外見に反して強いんですね!俺、好きになりそうだよ」

「良かったら、このあとご飯でも一緒に行かない?」

「初日の予選を勝ち抜いて、闘技場に現れた時から、実は気になってたんだ」

口々に、軽いセリフを並べる男達にジュビアは心底困っている様子。

「あの…すいませんが、ジュビアは早く着替えて、皆の所に戻りたいので、通して下さい」

ジュビアにとって、この男達をねじ伏せるのは簡単なことだが
彼らは一般人であるがゆえ、ただ言葉に訴えるしかなかなく、
それを知ってか知らずか、男達はジュビアの腕を取って、強引に食事へ連れて行こうとする。

その時、ふと自分の後ろに人の気配と、冷気を感じジュビアは振り返った。

「リオン様!」

「ラミアスケイルのリオン?!」

さすが、現在フィオーレ王国のbQに位置するギルドで、ジュラに次ぐ実力を持つリオンは、
それなりに顔も知れているようで、
そんな人物の登場したことにより、男達は思わず後ずさった。

「貴様ら、俺のジュビアに気安く触った事を後悔させてやる。」


リオンはジュビアを自分の後ろへ庇うと、男達を冷気で威嚇し一蹴した。





「ありがとうございます、リオン様。一般の方に手を出すわけにも行かなかったので、助かりました」


ジュビアはそう言って、リオンの方へ体を向けた。

だがリオンは、
露出が少ない服を着ているジュビアの印象が強かったため、
普段目に着く事の無い部分の肌があらわになっている水着姿のジュビアと、目を合わせられない。

ヒドゥンで図らずも、ジュビアの下着を見てしまった時とは大違いだ。


「いや。それよりもこれから先、あんな男達がうようよと近づいてくるだろうから、大会中は気を付けた方がいい。」

「大丈夫ですよ。皆さんすぐにジュビアなんかには飽きて、他のもっとかわいい方の所へいくでしょうから」

ジュビアのそんな発言に、
要点だけ述べて、その場を離れるつもりだったリオンは、
思わずその肩を抱いて、正面から否定した。


「そんなことはない!ジュビアはとても魅力的だ。今日の水着姿も良く似合っている!」



「でもグレイ様は、萌えてくれませんでした・・・」


先ほどのグレイの引き顔を思い出し、ジュビアは落ち込んだ。


ジュビアの気持ちが分かるリオンは、そんなジュビアの姿を見て、心を痛めた。

そしてそれと同時に、グレイを引き合いに出された事で、自分の中で今まで保っていた理性が、ふっと、あやふやになっていくのを感じた。


確かなのは、ジュビアの肩から伝わる、彼女の体温と、自分の中の、ジュビアに対する湧きあがるような熱い感情。


「あいつは見る目がないんだ。俺なら・・・」

そう言うとリオンは、ジュビアを壁際に寄せると、彼女の顔の横に手をついた。

「あの・・リオン様・・・?」

いつもと違い、真剣な表情でジュビアを見下ろすリオンに、ジュビアの心は落ち着かない。
リオンは、そんなジュビアの頬に手を添えると、ゆっくり唇を近付けた。

が、その時、バレーボール位はあろうかという大きな氷塊が、彼の頭を直撃した。

「んが!!!!!」

肩から崩れるリオン。
氷の飛んできた方を見れば、
仁王立ちで、無言のまま睨みつけるグレイの姿。

「グレイ様!」

「グレイ、貴様何をする!」

「それはこっちのセリフだ!!!お前こそジュビアになにやってんだ!!」
「俺は自分の気持ちに正直に動いただけだ!こんなに健気で可愛いジュビアに萌えない貴様に、邪魔される筋合いはない!」


2人は、ジュビアをそっちのけで言い合いを始めたが、そのおかげでリオンも落ち着きを取り戻し、いつもの大人な態度に戻った。

「ふざけんな!ジュビアの気持ちもちょっとは考えろ!」
「ふっ!グレイ。お前にもそのセリフそっくりそのまま返してやろう。」

「うるせえ!あんな公然と晒されたら、萌えるモンも、萌える訳ないだろ!!」

「2人きりなら、グレイ様も萌えて下さるんですか?」

突然のその言葉に、グレイは一瞬「しまった」という顔をしたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻ると
着ていた上着をジュビアにかけてやった。

「今はそんな事どうだっていいだろ?大会はまだ続いてんだ。とりあえず皆医務室に集まってんだから、早くお前も服に着替えてこい。」

「はっ!そうでした!すいません」

ジュビアは思い出したようにそう言うと、選手控室へ走って行った。
それを後ろから追うグレイは、去り際リオンを一瞥した。

その眼には、「次やったら全力で凍らせて永遠に冬眠させてやる。」といったニュアンスのメッセージが読み取れたが、
自分のしようとした事を考えれば当然であり
むしろ、いつもと変わらない態度で自分に接するグレイに、リオンは安心を覚えた。


グレイが来なければ、先ほどの男達と同じように、自分勝手な欲にかられて、ジュビアを傷つけていたかも知れない。
そう思うと、今回ばかりはグレイに感謝し、もう一度自分の行いを省みると
リオンは颯爽とその場を後にした。

ジュビアの事になると、冷静を保てないとは、俺もまだまだだな・・・・。

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