◆頂いた作品◆

□不思議の国のジュビア
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このお話は、あんきちがまめゆめ様に差し上げたに、まめゆめ様がコラボして下さったものです。


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気が付いたら、そこは見たことも無い風景だったー。


「・・・っん、」
重い瞼をゆっくり開けると、ただただ灰色の世界が広がっていた。
地面からゆっくりと上半身を起こして、辺りを見回す。
灰色の木々、濃灰の草花、そして・・・真っ黒な空。
動くものの無い世界で、無意識に身体が小さく震え始める。

“・・・なんで、こんな所に?”
確か、ギルドに居たはず。皆は?・・・グレイ様は?
あまりにも想像を超えた風景に、呆然として座っていると、
不意に背後から肩を叩かれた。
「っ!!」
ビックリして振り向くと、まずはじめにジュビアの目に飛び込んできたのは、
大きなウサギの耳。
「んなとこで何やってんだ、行くぞ!」
ぶっきらぼうに話すその声には聞き覚えがあって・・・
「・・・って、グレイ様?!」
ジュビアを立たせるように腕を掴むと、グレイ様はずんずん歩いていく。

「グレイさまっ!待ってください、これは一体どういう・・・
っグレイさまっっ!!」
ジュビアが必死に後を追いながら聞くと、
「オレは“グレイ様”じゃねぇ。“うさぎしゃん”だ。」
「・・・う、“うさぎしゃん”??」
真っ直ぐ前を向きながら、至って真面目にそう答えるグレイ様の言葉に、
思わず聞き返してしまう。
「えっ?でもそれってどういう・・・」
「今は説明してる暇がねぇ。とにかく来いっ!」
事態を飲み込めず、オロオロしているジュビアに、
“うさぎしゃん”はそれだけ言うと、足早に歩いていく。

ジュビアの思考が停止して、ついていけずにまだその場に立ちすくんでいると、
「置いてくぞ、早く来いっ!」
遠くからジュビアを呼ぶ声がする。
“い、今は兎に角、彼に着いて行かなきゃ。”
そう思い直すと、不安な気持ちを抑えながら、
慌てて“うさぎしゃん”の後を駆け足でついて行った。


木々がざわめき、灰色の生温かい風がジュビアの頬にあたる。


“本当によく似ている。・・・あの耳以外は。でも・・・”
グレイ様に瓜二つの“うさぎしゃん”をマジマジと見つつ、思わずため息をつく。
そう、でもよく見ると、
“グレイ様”ならぬ“うさぎしゃん”は素敵なタキシードを着ていた。
脇には帽子まで携えて。・・・“グレイ様”だったら、こんな格好しないかも。
そして、何故かジュビアも着替えた記憶が無いのに、
服は可愛いフリルのワンピース、頭には帽子ではなく大きなリボンが結わえてある。
“まるで、さっきルーシィが声を出して読んでいた本の中のお話のよう。”
そんな事を考えながらクスリと笑っていると、
前を歩いていた“うさぎしゃん”の背中にぶつかった。
「・・・すみません。」
そう言いながら鼻をさすっていると、
「これを飲んでおけ。」
「?」
“ウサギしゃん”は、ジュビアに小さな透明な瓶を渡した。
中には少しどろりとした、半透明の液体が入っている。
「・・・もしかして、身体が小さくなる薬ですか?」
確か、ルーシィがそう朗読していたような・・・
「いや、少しの間だけ身体が透明になる薬だ。」
「・・・身体が、透明?」
「お前は今、ある“変態”に狙われてるんだ。
お前をそいつに渡すと後々厄介だからな。かくまってやる。
ただし、うっかり声を出すとすぐに薬の効果が無くなるから、声は絶対に出すな。
・・・それを飲んだら、オレの側でじっとしていろ。いいな。」
「えっ?でもその“変態”って?」
「・・・“赤の女王”だ。」
“うさぎしゃん”は苦々しい顔でそこまで話すと、ジュビアに薬を飲むように促した。

そんな“うさぎしゃん”の言葉が“グレイ様”の言葉に聞こえてくる。
かくまってやる?オレの側にずっと・・・?・・・・・・一生、側に居てくれ??
そ、それってもしかして・・・
「プ、プロポーズ・・・」
「んな訳ねぇだろっ!いいからさっさと飲めっ!」
少し怒ったような“うさぎしゃん”に、無理やりに小瓶の薬を飲まされる。
「・・・?」
自分では解らないけれど、ジュビア、今透明なのかしら??

「よし、此処に居ろよ。」
そう言って、“うさぎしゃん”は大きな大きな椅子に座り、その隣にジュビアを座らせた。
目の前には丸いティテーブルの上に果物やティセット、お菓子なんかが置かれている。
“ず、ずいぶん密着してる気が・・・”
ドキドキしながら、“うさぎしゃん”の隣に座っていると
軽い蹄の音を響かせせながら、緋色の髪をなびかせた女性がこちらにやってくる。
“??・・・エルザさんが赤の女王?でも、うさぎしゃんは変態って・・・?”
「“うさぎしゃん”ではないか、此処で何をしている?」
「見りゃ解るだろ?茶会だよ、茶会。」
二人はある意味恐ろしい殺気を纏わせながら、穏やかに会話を続けていく。

「ほう、一人で茶会とは、面白い趣向だな。
実は、ある娘を探している。・・・もしや“うさぎしゃん”、
貴様、その娘をかくまっていたりしてないだろうな?」
“赤の女王”エルザさんの瞳がキラリと光る。
“・・・格好良いけど、ホントに怖い。”
ごくりとツバを飲む音すら聞こえるんじゃないかと思うほど、
世界の音がしんと静まっていく。
声が出せない分、身体は正直であまりの緊張に手の震えが止まらない。
椅子の上に置いていた、震えているジュビアの右手を
テーブルの下で“うさぎしゃん”がぎゅっと握ってくれる。
“うぅっ、グレイ様・・・じゃなかった、うさぎしゃん、優しい。”
そう思ったのもつかの間、うさぎしゃんはジュビアの手を離し、
腕を椅子の外にゆっくりと動かす。

「・・・娘?そういや、居たなぁ。さっきタマゴ野郎があっちに連れてったぜ。」
片足を折り曲げ、その膝に帽子を置いて、“うさぎしゃん”はニヤリと笑う。
「・・・ハンプティダンプティか。よしっ、これからそちらに行ってみよう。」
馬の方向を変え、颯爽と踵を返す赤の女王に、内心ホッとしていると、
「近衛隊長、娘は居たのか?」
不意に遠くから声が掛かる。
「女王陛下!わざわざこのような処に・・・
申し訳ありません、一足違いでハンプティダンプティが連れて行ったようです。」
エルザさんは馬から降りると恭しくその声に傅く。
“えっ?赤の女王ってエルザさんじゃないの?”
そう思って、ゆっくり声の方に視線を向けると・・・
「っ!!リ、リオン様っ!!?」
思わず、声を出してしまった。
「っばか!!」

ハッとして“うさぎしゃん”を見る。でも、もう後の祭り。
姿を現したジュビアに“近衛隊長”が“うさぎしゃん”を睨む。
じりじりと“うさぎしゃん”に間合いを詰める“近衛隊長”に、
「・・・なんだ、やはり此処に居たのか。」
馬車から降りてきた“赤の女王”はそう言うと、
ジュビアに近付いて微かに笑い、腕を掴んで引き寄せた。

何だか嫌な予感がする。
同じ“居る”なら、“うさぎしゃん”の側が良い。“赤の女王”の側ではイヤ。
“リオン様”ではなく、“グレイ様”の側が良い。

「離して下さいっ!リオンさまっ!!イヤです、離してっ!」

そう言ってジタバタするジュビアの頭にズシンっと何か、重みを感じて
ジュビアはそのまま、ゆっくりと意識が遠のいていった。



「っん、・・・・・・重い。」
重い瞼をゆっくりと開けると、目の前には青いしっぽが揺れていた。

「お、おいらじゃないよ、ジュビア。
おいらが傍で魚を食べてたら、
いきなりグレイがおいらを掴んでジュビアの頭に乗せたんだ。」
ホントだよぉ、信じてよぉ・・・そう言って泣いているハッピーの側で、
ウェンディとシャルルが頷いている。

ボーッとしていると、
「大丈夫か?ジュビア。
うなされていたぞ、“イヤです、リオン様っ!”とか何とか言って・・・」
心配そうにジュビアの顔を覗くエルザさんの隣で、
「どんな夢を見てたのよ?♪
ねぇねぇ、リオンに何されてたの?♪」
気になるわぁ♪と楽しそうにしゃべるルーシィ。

誰のせいだと・・・!
そう言おうとした時、
「・・・大丈夫か?」
ジュビアの頭にハッピーを乗せた本人が、あまり悪びれもせずに声を掛けてくる。
「・・・はい、ありがとうございます、うさ・・・じゃない、グレイ様。」
そう言ってどもるジュビアを不思議そうに見て、
グレイ様は欠伸を一つ、した。
「もう眠いから、オレは帰るわ。じゃぁな、また明日。」
そう言って席を立つグレイ様の後を
「途中まで、ジュビアも一緒に帰りますっ!」
慌ててジュビアも席を立って、追い掛ける。

グレイ様の後ろ姿を見ながら
“猫耳グレイ様より、うさ耳グレイ様の方が好きかも♪”
そんな事を思い出して笑っていると、
「何だ?なんか付いてるのか?」
後ろを振り向かずにグレイ様が声を掛けてくる。
「・・・いいえ♪グレイ様は何処でどんな姿になっても素敵だなって思って♪」
「お前、よくそんな台詞普通にしゃべれるな。」
呆れた声でグレイ様が答える。

「ふふっ、なんだか得した気分です♪」
やっぱりルーシィには、ちょっとだけ感謝しておこう。

そんな事を考えながら、今日もグレイ様の隣に居る幸せを感じていた。



**********

ちなみに、まめゆめ様から頂いたこのお話に、あんきちが更に落書きを足しまして…
ただ、リオンが完全に残念で、嬉しそうに変態してるので、カッコイイリオンが好きな方は、このまま終わりで、お戻りください。
全然大丈夫!な、勇者は下のリンクをクリックだ!ww

赤の女王リオンと近衛隊長エルザ

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