◆頂いた作品◆

□グレジュビ新婚旅行
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「疲れました…」

その一言と共にジュビアは、ドサリと広いベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。
そのすぐ横にグレイ様が座るのをベッドがしなることで感じる。
ジュビアは顔だけグレイ様の方に向けた。

「ジュビア、このまま寝ちまうのか?」

グレイ様は、ジュビアの髪を掬い取り指で弄る。ジュビアは何も答えない。

「疲れているとはいえ、朝から寝ると体内時計が変になるぞ」

そんなことはわかっている。が、疲れているのはグレイ様のせいです。

「グレイ様?今日は観光には行かないですよね?」

ジュビアが顔を少ししかめると、グレイ様は指から髪を離した。髪がバサリとベッドに落ちる。

「行かねぇよ。でも、ジュビア…俺たち新婚なんだぜ」

そう言うとグレイ様が身体を倒しながら、顔を近づけてきた。ジュビアは顔をまた枕に埋める。

「ダメですよ。グレイ様のせいで疲れているんですから、ジュビアは」
「つれねえなぁ」

くぐもったジュビアの声にすぐグレイ様が返答する。その声には笑いが含まれている。

(つれなくなんかないです)

船が夜の便だから結婚式が終わってから家に帰っても良かったのに。グレイ様が港に近い所に泊まる方が便利だ、とホテルを予約していた。
確かに便利だった……いや、港に近すぎて便利すぎだった。
ホテルで一泊したジュビアたちはほとんど寝なかった。厳密に言うと、ジュビアはほとんど寝かせてもらえなかった。
それどころか、出発間際までベッドの中でほとんど離してもらえなかった。
いくら船の中で寝たとはいえ、眠いし、疲れている。

「結婚式の前夜は何もしないで、俺我慢したんだぜ」

言いながらジュビアの背中に指を這わせる。薄い布越しにも感じるグレイ様の指は、正直心地良い。

「だから、何ですか?」
「だから、昨日の夜はちょっとばかり激しくなっただけなんだ。……怒ってるのか?」

疑問系で聞きながら、ジュビアの身体をゴロリと仰向けにさせるあたり、全然反省してない。
仰向けにさせられたジュビアが口を尖らせると、グレイ様が軽く唇を合わせてくる。

「…………夜だけでなく、朝も昼も頑張ったので、グレイ様もお疲れですよね?」

グレイ様は答えずに、そのままジュビアの髪の間に顔を埋める。首筋にグレイ様の吐息がかかる。

「……ジュビア」

少し顔をずらして言ったグレイ様の声がジュビアの吐く息の中に消えた。
頬を撫でる感触にジュビアが薄く目を開けると、目の前にグレイ様の漆黒の瞳が見えた。
優しく頬を撫でるグレイ様の指にジュビアはもう一度瞼を閉じた。

「ジュビア…一度起きて、シャワーを使え」

唇を指でぷるんと弾かれて、ジュビアは微睡みから覚醒する。

「シャワーを浴びたら、遅い昼飯を食って、その後は――」
「……グレイ様の…エッチ…」

もそもそと身体を起こしたジュビアは、身体にシーツを巻つけると、それを引き摺りながら広い浴室へと向かった。



そして二週間後――。
新婚旅行から戻ったジュビアとグレイ様は、みんなに不思議がられた。

『南の島に行ったのに、どうして日焼けしていないの?』

と。
二週間ほとんどホテルの部屋から…いや、グレイ様の腕から出られなかったから。だが、そんなことは口に出せない。

「日焼けはお肌の大敵なんです」

ジュビアは数日その言葉を繰り返すはめとなった。

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