◆頂いた作品◆
□グレイと甘い時間
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今日のギルドもいつも通り騒がしかった。
グレイは相変わらず、リオンに付きまとわれ、機嫌が悪い。
そこに登場したのは大きなスーツケースをがらがらと転がすジュビア。
「なんだ?その荷物」
「ジュビア、長期の仕事か?俺も一緒に行こう♪」
グレイは抱きつこうと立ち上がったリオンを足蹴にし床に踏みつぶした。
「グレイ、貴様、なんのつもりだ!」
「それは、こっちのセリフだ。なんでジュビアの仕事に他のギルドの人間がついて行こうとするんだ!」
「愛する者同士、常に一緒にいるのは当たり前じゃないか」
暴走するリオンに、ジュビアはえいっとでこぴんをした。
「ジュビア?」
「リオン様とは愛し合ってませんよ!あんまり勝手なことをおっしゃるとジュビア怒ります」
むっと、眉を上げるジュビアはとてもかわいらしく、リオンの下心をくすぐった。
「ジュビア!!!!いい!そんなツンデレな感じも大好きだ〜〜〜〜」
「はう!!!!」
盛大に腕を広げ、ジュビアに向かって行ったリオンをグレイは一瞬で凍らせた。
「これで少しは静かになるだろう」
「あの、グレイ様!!!」
「なんだ?」
リオンのうざったいくらいの声が消えたかと思えば、今度はジュビアが鼻息荒く話しかけてきた。
「お願いがあります!!!!」
「嫌な予感がするな・・・」
「今日から3週間、グレイ様のお家に泊めていただけませんか????」
「はあああ?」
グレイはジュビアの突拍子ないお願いに、椅子から崩れ落ちた。
「もちろん、生活費はきちんとお支払いしますし、ご飯も洗濯も、お掃除も任せてください!!!!!そして、グレイ様さえよろしければ・・・・・夜の方も・・・・・」
「ストップ!!!!無理に決まってんだろ!」
顔を真っ赤にして、ジュビアの言葉を遮ったグレイを、少し離れた所でロキが笑って見ている。
「グレイ、泊めてやりなよ。女子寮の水回りの改修工事が始まるから、しばらく女の子たちは他のメンバーのところに世話になるんだよ」
「はあ?他の奴ってもしかして・・・・・」
グレイはギルドを見回し、ある人物のところで目が止まった。
「レビィもどこかに泊まるのか?」
「はい♪ガジル君のところにお邪魔するみたいですよ〜」
「大丈夫なのか?」
「そういう風にやましくとらえるから、君はむっつり言われるんだろ?仕事で同じ部屋に泊まるって考えれば普通のことじゃないか」
ロキはグレイの胸元にこぶしを押し付け、ぐりぐりとしながらにやけている。
「今までだって、仕事でルーシィやエルザと泊まったことがあっただろ?」
「う・・・・・・」
「そん時に手を出そうとか考えたか?」
グレイはロキの問いに妙に納得した。
確かに、女子と泊まる機会はたくさんあったが、ただ一緒の部屋で眠るだけ。別段おかしなことはない。
グレイが了承したと返事しようと振り返ると、ものすごい殺気!
「ジュビア?」
「グレイ様、ジュビアとは一緒に寝てくださらないのに・・・・・恋敵とは〜〜〜〜〜ジュビア、許さない!!!!!今日からリオン様のところに泊まります〜〜〜」
「ま、まてまてまてまて!!!俺の家に来い!」
グレイはジュビアとロキの思惑にすっかりはまってしまった。
ジュビアはきょとんとし、ロキはくすくすと笑っている。
そんな二人にいらっときたが、ここは仕方がない。リオンなんかの部屋に泊まられるよりは安心だろうと、自分に言い聞かせた。
「いいんですか?」
「泊まるだけだろ?別にいい」
グレイは無愛想に返事をし、部屋をかたずけるために先に家に戻った。
部屋に入ると、グレイは急いで窓を開けた。
そして、さんさんと光の入るベランダに、かけ布団を干した。
めまぐるしく、部屋を掃除機がけし、お風呂も綺麗に洗った。
「はあ、俺なんでこんなに綺麗にしてんだよ。真剣に掃除したの初めてじゃないか?」
お風呂場の窓も開け、室内はだいぶさっぱりした。床に落ちているものもなく、部屋の埃っぽさも消えた。
「はあ、もうこれでいいや」
グレイは持っていた雑巾を流しに投げ捨て、ソファに腰を落とした。
なれないことをした疲れをいやすために、足を上げ、あおむけでねっこっろがる。
「ジュビアがきたっていつもどおり、離れて適当に過ごしていれば、3週間なんてあっという間だ」
まだ、眩しい日を避けるために目に乗せた腕はちょうどいい重みで、眠気を誘った。
「やべっ、ねみぃ・・・・・」
グレイは陽だまりの中、うとうとと眠りについてしまった。
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次に目を覚ましたのは、空が真っ暗になってから・・・・
「グレイ様・・・・」
「うお!!!?」
グレイは耳元でささやかれた自分の声に驚き、跳ね起きた。
そこにいたのは、暖かいシチューを手に、にっこりと笑うジュビア。
「グレイ様、もう7時ですよ♪ご飯食べられそうですか?」
ジュビアはグレイが起き上がってできたわずかなスペースにちょこんと座った。
「布団・・・」
「おふとんなら、取りこんでグレイ様の上にかけましたよ〜」
「あ、そうか」
足元にかかった布団を引き寄せ、軽くたたむと、ソファの上に適当にのせた。
ふとんからは太陽の匂いのほかに、ジュビアのほのかな桜の香り。
「いいにおいだ」
「そうですね♪冷めないうちに食べてしまいましょう」
グレイは別の意味で言ったのだが、ジュビアは手元のシチューをグレイに手渡し、スプーンを取りに行った。
場所が分からないのかきょろきょろとしている。そんな普段あまり見れないしぐさが新鮮で男心をくすぐった。
「ジュビア、スプーンは食器棚の左だ」
「は、はい・・・すみません」
ジュビアはぱたぱたと小走りでスプーンを持って来た。
ソファは対面にもあるのに、ジュビアは当然のように、隣にピッタリくっついて座ってくる。
「ジュビア、シチューありがとうな。なかなか上手い」
「本当ですか?うれしいです〜。ジュビア、そういってもらったのは初めてです♪初めて作った時は食べてさえもらえなかったので・・・・」
グレイはスプーンを持つ手がとまった。
自分には覚えがない、ということは前に付き合っていた男。
「ボラ?」
「はい?」
グレイの口から出た無意識の言葉は、ジュビアに届くことはなかった。
「ジュビア、ごちそうさま」
「ふふ、おそまつさまでした」
嬉しそうに食器を下げるジュビアを見ながら、グレイは床に横になった。
腕を頭の下で組むと、皿を洗う後姿をじっと見た。
「あいつ、俺に会う前に付き合っていた男と、こういうことしてたのかな」
「なんですか?水の音でよく聞こえないのですが?」
「別に」
ジュビアはふわふわした髪を揺らし、すぐに戻ってきた。
グレイの足元までくると、楽しそうな声が聞こえてきた。
「グレイ様、うつぶせになってください♪」
「うん?なんだ?」
「足を踏んであげます」
「俺にそんな趣味はねえよ」
グレイはマッサージしてくれるのに気がついていた。しかし、ボラのことが頭から離れず、つい冷たく返してしまった。
「マッサージですよ♪昨日グレイ様はお仕事でたくさん街を歩いたってルーシィに聞きましたから♪」
ジュビアはこういうのは得意なんですと言うと、水でグレイをひっくり返した。
グレイも特に抵抗はせず、大人しく顎の下で腕を組んだ。
下に引いてあるラグが顔をくすぐってこそばゆい。
「どうですか?」
「うん」
グレイの足の裏に乗るジュビアは少し軽くて物足りなかったが、自分のために何かをしてくれるのがとてもうれしくて、自然と口元が緩んだ。
「ジュビアの足冷たいな」
「さっきまで、キッチンのフローリングにいたからですよ♪グレイ様の足はあったかいです」
「ああ、うとうとしてたからな」
「眠くて体温が上がるなんて、子ども見たいですね」