K.H

□小さな変化
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昨日はあんまり寝れなかったのに、朝からこんなことってどうなんですか。

「待ってたよ。みょうじなまえ。」
「雲雀さん……」

いつも通り家を出て、いつも通り学校について、いつも通り下駄箱で靴を履き替えたらこれだ。
ずっと待ち伏せしていたのだろうか。

「ちょっと着いて来てもらうよ。」
「……はい。」

ああ、私の人生もこれまでか。
早かったな。
もちろん後を着いて行き連れてこられたのは応接室。
中にはいるといかにも高価そうなソファーに腰を降ろせと促された。

「……あの。」
「なに。」
「普通は向かい合って座るものじゃないですか?」

なぜだか、なぜだかこの男は、わざわざ二人掛けのほうに私を座らせ、自分もその隣を陣取った。
なんとなく一生懸命端によってしまう。

「昨日君は、」
「はい?」
「僕が戦意を向けたら臨戦体制に入ったね。」
「………はい。」

僅かな変化だったのに見逃さないそれは流石というか。
彼がどれだけの実力者かじんじん伝わってきた。

「戦い慣れてるみたいだね。」
「別に慣れては…」
「けど、沢田綱吉が起き上がった瞬間、異様に動揺していた。」

どこまで見ていたんだ、この人は。
それともそれだけ私が顔に出していたのだろうか?

「……それで、結局なにが言いたいんですか。」
「ああ…君に少し興味が湧いたんだ。」
「興味?」
「君には風紀委員になってもらう。」
「は?」
「そしたら、その金髪も見逃してあげる。」

思いもよらぬ提案に一瞬迷ってしまうが、これはこちらに利がある提案だ。
この金髪を見逃してくれるというのだから。
断らない手はなかった。

「…分かりました。」
「ワオ。案外素直だね。」
「まぁ、てゆうか私図書委員なんですけど…」

それは勿論退会。
薩川先輩になんて言うかな。
もとはと言えばあの人の所為なんだけど。
リーゼントの人に指示し、社長が使うような机の引き出しから一つ“風紀”と書かれた腕章を持ってきた。

「これちゃんと着けといてね。」
「はい。」

受け取った際に少し指先が触れてしまい、反応してしまう。
…なんか恥ずかしい。私が意識してるみたいで、
誤魔化すように受け取った腕章ん腕に通した。
安全ピンを止めようと少し葛藤していると、不意に雲雀さんが私の髪を一房とった。

「ひ、雲雀さん、」
「見た目によらず男慣れしてないんだね。」
「ほっといてください!」
「ふふ、」

なんで地味に楽しそうなんだよこの人!
少し熱くなってしまった顔を逸らし、やっとの思いで安全ピンを留めた。

「あと4分で予鈴がなるよ。放課後は必ず来るんだよ。」
「あ、はい。」

失礼しました。一声かけて室内からあとにする。
もう予鈴直前だから生徒も疎らだが、誰かとすれ違うと必ず目を見開き腕の腕章を凝視される。
どんだけすごいの、この腕章。
今までも結構廊下歩くだけで目立っていた(この髪の所為で)けど、今は興味と、追加で恐怖の目で見られるようになってしまった。
 

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