K.H

□思い通りには行かないもので
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「はぁ、はぁ、はぁ」

無我夢中で走っていたため、何時の間にか屋上まで来てしまった。
フェンスに寄りかかって崩れるように座り込む。

今回の一件で少しだけ、ほんの少しだけ沢田綱吉と関わることになるだろう。
沢田君はすごく優しい子だ。
危険視すべき人物だから日々の学校生活で彼を観察して来たが、優しく、友達思いで、純粋な、すごくいい子だった。
関わってはいけない、というのは警戒しすぎなのだろうか。
何度もそう思ったが、私が危険視しているのマフィア界なのだ。
甘いこと言っていたら足元掬われてしまう。

「転校しよーか…でもそんなお金ないな…」

でも雲雀さんに目付けられちゃったし。
そんなことをあれこれと考えるが、実際は私はただの中学生。
出来ることなんて限られている。

「ちゃおっす。」

一人だと思っていた屋上に幼い声が響き、反射的に肩を揺らしてしまった。
視線を声の主へと向けると、そこにいたのは黒い服を着た赤ちゃん。

「……迷子?」
「おめーがみょうじなまえか?」
「そうだけど…」

返事したあとに気づいた。
あれ、なんでこの子私の名前知ってるの?

「おまえを俺の愛人にしてやってもいいぞ。」
「いや結構ですから。…君なんで私の名前知ってたの?」
「俺を誰だと思ってんだ。ボンゴレファミリー最強の殺し屋、リボーンだぞ。」
「っな!?」

リボーン。
一度その世界に入ったら必ず聞くことになる名前。
ボンゴレファミリー。
マフィア界最大手と言われるファミリー。

この子は本当に本物なのか。
でもこんな赤ん坊が?
じゃあそもそもなんで赤ん坊がそんな名前を知ってるの?

本物だとしたらなんでここに?

「……沢田君か、」
「ああ。俺はツナの家庭教師なんだ。」
「私に何か用?」

暗殺しに来た。とか言われたらどうしようか。

「おまえ、ツナのファミリーになれ。」
「……………………………は?」

口に出されたそれが想像していたものと全く違ったため、つい間抜けな声を出してしまった。
ファミリー?私を?

そんなの、真っ平ごめんだ、

「無理。」
「なんでだ?」
「私はマフィアになんてならない。マフィアなんて大っ嫌いなの。…だから、他当たって。」
「気に入ったぞ。やっぱりおまえファミリーになれ。」
「はあ!?」

人の話聞いてたかこのガキっ…!
仰天する私を他所にリボーンはひらりとフェンスに飛び乗り、肩にいたカメレオンをパラシュートにして屋上から飛び降りて行った。

「……なんなのよ…」

屋上に一人残された自分の声が酷く弱々しく、虚しく感じられた。
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