めいん

□第四話
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*はじめに*

 今回から中心人物の中にオリキャラが登場します。オリキャラ混じりはいや!という方はすみません・・・。いいよ!という方のみどうぞ。(^-^)


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 両手にあるカップから揺れる湯気が歩く風に揺れ、音もなく消えていく。
 リビングのソファにうずくまる少年―――高橋の前にココアを、自分の前に珈琲のカップをテーブルに置く。

「どうぞ。」
「あ・・・ありがとう、ございます・・・」


 外では小粒の雨が降り注ぐ中、高橋は今、伊集院の家に来ていた。

高橋によると、今日は特に用事がなかったらしく、かといって家でじっとしている気にもなれず、外にでていたそうだ。
 だが、そこで何者かの視線を感じた。最初はただの勘違いだと思っていたのだが、念のため路地を滅茶苦茶に曲がってみた所、一向に消える気配のない様子から高橋はつけられていると確信した。このままでは危険な気がするので、最寄りの交番にでも行こうと思ったのだが、話す訳が思いつかなかったそうだ。そこで、唯一事情を知る伊集院のことを思い出し、頼ってくれたということだ。


「・・・・・・」
「・・・・・・」

 暫くの沈黙が続いた。
 そういえば、高橋は元からこういう雰囲気だっただろうか。最近、というより昨日の1件から、高橋は何だか眉が下がっているのが常な気がする。
 それは・・・仕方がないことだとは思うけれど、ずっと抱え込んだままでは体が持たないだろう。

 せめて、溜まった気持ちを吐き出して、少しでも気持ちが軽くなってもらえたら嬉しい。

「・・・高橋君」
「は、はい・・・?」

 一つの疑問と、一つの提案をすることにした。

「あの後、宇佐見さんには、云えた?」
「っ!・・・・・・えっと・・・」

 伊集院の予想は的中していた。おそらく、そのまま云えずにここまで着たのだと。それで、云えていないからこそ、帰りたくないのかもしれない。

「云えてない、んだね?」
「は、い・・・その・・・」
「だから、ここに来たのかい?」
「・・・あ、の・・・ウサギさん、今家に居ないんです」
「・・・え?」

 流石に予想が全て当たるわけでも無いようで。
 居ない、というのは仕事で出ているのだろうか。

「・・・仕事?」
「はい・・・今日と明日、出かけるって云っていました」

 こんな、大変な時期に二日も開けるだなんて。宇佐見には少し失望した。かといって、仕事ならば振り切ることなど到底出来ない。

「そう・・・」
「・・・・・・」

 再びの沈黙。
 話題を変えるには丁度いい。

「あのね、高橋君。出来れば、俺に話してくれない?」
「え・・・?」
「俺は昨日のことしかしらないけど・・・もしかして、それ以外にもあったんじゃないかなって思って。・・・只の俺の想像で終わって欲しいんだけどね。本当は」
「・・・・・・」

 この無言は、肯定を示すだろう。
 湯気が見えなくなった珈琲を、喉に流し、高橋の返事を待つ。

 と、高橋は言葉ではなく、ポケットから数枚の色紙を出してテーブルに並べた。
 伊集院が頭上に疑問符を浮かべていると、ゆっくりと開いた高橋の口が、話し始めた。

「これ・・・最近家のポストに入っているんです。・・・毎、日」
「・・・ちょっと見てもいいかな?」

 こくん、と高橋が頷くを見てから、色紙に手を伸ばした。開くと、どれも同じような内容が書かれていた。

『ようやく出会えた。何年ぶりか。
 ずっと見守る、遠くから。
 話したい、話したい。
 もうすぐだ。』


「・・・なんというか・・・こ洒落た、ラブレター・・・?」
「・・・洒落たというか・・・懲りすぎなんですよ」

 今、高橋が笑った気がした。ここに来た時よりも、幾分顔色が良くなっている。
 これで、よかったのかもしれない。

 それから高橋は、最近何度もつけられていたことや、手紙が届く前に一度、男に襲われかけたことなどを話してくれた。
 話していくうちに、感情的になって、気分が悪くなるかもしれないと思ったのだが、高橋は逆に、恐怖よりも、ウザイ、とか、邪魔くさい、といった怒りで話していたような気がする。


「はぁ・・・なんかスッキリしました」
「ははは、すごい勢いだったよ・・・でも、よかった」
「え、何ですか?」
「いや、こっちの話」

 すっかりいつもの高橋君になった気がした。









いつの間にか雨は止み、空は薄暗くなっていた。

「あ・・・すみません先生、長居しちゃって。お仕事ありましたよね・・・」
「いや、今日は俺も特に予定はなかったし、問題ないよ」

 帰る支度をする高橋に、そっと云う。

「また、いつでもおいで。もっと頼っていいんだよ」
「・・・ありがとう、ございます」
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