カゲプロ


□何気ない日常+α
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PM2時23分、商店街。
「やっほー。セト」
花屋の緑に囲まれた緑のツナギに声を投げ掛けてみた。
覗く顔の下、腕に抱えた紙袋ががさがさ小さな自己主張。
花束用だろうか。
綺麗な薄紙を持ったセトが振り返る。
「あ、カノ!どうしたんすか?」
「買い出しついでに寄ってみた。邪魔じゃない?」
「大丈夫っすよ。今お客さんいないし」
薄紙を置いてセトが奥から出てくる。
そのまま立ち話をすること数分。
不意にセトが店長さんに呼ばれた。
お仕事だもんね。
そろそろ帰ろう。
紙袋を抱えなおして歩き出す。
ちょっと期待もあったけど、まあ人生そう上手くはいかないものだ。
ままならないからこそ楽しいとも云うし、ね。
そう思った途端今度は僕に後ろからの声が掛かった。
「カノ!」
振り向けばエプロンを外した緑のツナギくん。
「セト。バイトどうしたの?」
「今日はお客さんも少なかったし早めに上がっていいって店長が」
「それで僕追いかけたんだ」
「そうっす。一緒に帰ろう、カノ」
「…うん」
前言撤回。
人生たまには上手くいってもいいらしい。
僕のルールブックに訂正が入れられたPM2時32分、商店街の出口前。


一応付き合ってる僕らだけど、アジトじゃ皆がいるし外じゃ男同士だしでなかなか二人で居られない。
だから帰り道は暗黙の了解で遠回り。
同じ街でもあんまり来ないってだけで全く知らないどこかになるから不思議だ。
何か飲みたくなって隣を歩くセトを少しだけ見上げる。
「コンビニ寄りたい」
「いいっすよ」
歩道を斜めに横切って普段全然来ないコンビニに入った。
飲み物を求めてコンビニに入ったのだけれど、気分が逸れて人気のないコーナーへ。
二人で十分なそれを一袋取り上げてまたドリンクコーナーに戻った。
目に留まったペットボトルを取り隣を見れば、ちょうどセトも缶を一つ選んだところだった。
「セト、他にないなら僕買ってくるよ」
「お願いするっす」
その代わりに、と言われセトに財布だけ抜いた紙袋を渡した。
会計409円。
小銭がなくてお釣りが91円なんて微妙な数字になった。
左手に袋を提げ紙袋を受け取ろうとしたら拒否される。
一人で持ったらけっこう重いのに。
眉根が寄った瞬間、右腕に紙袋を乗せたセトに右手を包まれた。
「寒いから、手袋代わりっす」

「…人通りが多くなったら放すよ」
はにかみを含んだ笑みに絆されてしまったPM2時57分、コンビニ前の知らない道路。


ちょっと回り道、の道すがら見つけた小さな公園。
人影どころか子どもすらいない。
公園としてそれでいいのだろうかと思うけど。
繋いだ手を見せびらかすように誰もいない公園に向けて振った。
ベンチに並んで座ると冷たさが触れてる部分から全身に広がる。
身震いしたら、そのタイミングがぴったり同じでまた同じタイミングで吹き出した。
「はい」
「ありがとうっす」
コンビニの袋から缶コーヒーを出してセトに手渡す。
続けて自分の分も取り出したらセトが少し目を見開いた。
「カノ…。ココアとアイスっすか」
「アイスって云ってもちっちゃいけどね」
「寒くないっすか?」
「それがいいんだよ」
大福の中にバニラアイスが入った定番のお菓子。
寒くても急にアイスが食べたくなることってない?
それがさっき来たんだよね。
「セトも食べる?」
大福を半分に割って差し出せばなんだかんだで食べるらしい。
なんか雛に餌づけしてるみたいだ。
笑ったら指にセトの舌が当たってびくついた体に逆に笑われた。
結局笑い合ったPM3時18分、寂れた公園の色褪せたベンチ。


少し寂しい公園に、空のコーヒー缶とココアのペットボトル。
その横にはアイスのパッケージに色々詰まった紙袋、コンビニの小さなビニール袋。
それと、並んで座る僕達二人。
風のせいで悴んだ指は離したくても離れない。
あとは…そうだなぁ。
キスでもあれば文句無し。
冬は甘すぎるくらいがちょうど良くない、ダーリン?

青春蜜月真っ盛り、僕らのこの街。



END



―あとがき―

セトカノでしたー
こねたは書いたことありますが小説は初
受けなカノを書くのが楽しかったです(笑)

方向性はほんわかしたセトカノでした
過去形ですはい
もう理想の斜め120度を行く自分の能力は諦めようと悟りを開きました
なので今回は言い訳もここまで

読んで下さってありがとうございました!



〔私信〕
もしも見てくれていたらいい西軍の日生まれのリア友に捧げます
こんなんで良ければ貰ってやって
っていうか羞恥に負けてメール出来ないチキンを許してごめんなさい

(上記のリア友以外はお持ち帰り禁止です)                            

 

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