カゲプロ


□互いの為の
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※暗い


『ご主人』
「何だ?エネ」
『好きですよ』
「オレもだよ」
好き、大好き。
私が言えば必ず言葉は返ってくる。
もちろん、ご主人から始まることもあるけれど。
そんなの稀すぎてカウントには入れられない。

『ご主人』
「どうした?」
『ご主人が一番好きなのは、私ですよね?』
「そうだよ」
短いながらも躊躇なく返ってくる言葉。
よくある少女漫画のようなやり取りは今日も飽きずに続けられている。
でもご主人。
それは貴方の本当の気持ちじゃない。
私、知ってるんですよ?
貴方はまだあの娘を忘れられてないんでしょう?
貴方が夜、あの娘の名前を寂しそうに、苦しそうに呼びながらうなされるのを私はただ画面の向こうから見ているだけ。

でも私に貴方を責めることなんて出来ないんです。
客観的に見れば遊ばれているとされてもおかしくはないのに。
それは何故か?

だって私も――貴方と同じだから。


『貴音』
今でもはっきり覚えてる。
大好きな低音。
目が覚めた後でも君の声だけはちゃんと覚えていた。
『…遥…』
大好き。
ずっと、大好き。

今の私は遥に会えない代わりにシンタローを利用してる。
でも、それは遥に会うときまで。
だから遥、待っててよ?


私は今日も電子の海に漂い生きる。



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