カゲプロ


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闇に包まれたビルの上を強い風が吹き抜ける。
オレ、如月伸太郎はここである人物を待っていた。

「…にしてもちょっと遅い。さすがに寒いし」
初夏とは言ってもまだ5月。
十分肌寒い季節だ。
オレは何か温かい物を買って来なかったことを後悔した。

更に待つこと十数分。
視界にようやく影が映った。
トッと軽い音を立てて空から降り立つ白い人影。
オレはその白に早速文句を言わせてもらうことにした。
「、遅い。待ちくたびれた」
「冷やしてしまいましたか?申し訳ない。…というか来て下さると思っていなかったもので」
人影――怪盗キッドはモノクルとシルクハットの陰で苦笑する。
「…まあ確かに最近来てなかったけど」
いつからかオレ宛てに別に届くようになったキッドの予告状。
そこにはオレ好みの暗号が記されていて。
解くとキッドの中継地点も分かるようになっていた。
けれど、最近キッドの現場には来ていなかった。
もちろん元に戻って色々と忙しいということもあったが、なんとなく来づらかった。
最後に会った時――レイヤとしては最期に会った時、オレはこいつに助けられた。
そのことを考えると暗号を解いても複雑で来れなくて。
でも伝えたいこともけっこうあるし、どうしようと悩んでいたら、文乃に1回会えと背中を押されたのだった。(実際は先生の車で吐かされたビルまで連行されたのだが)
そして今。
数ヶ月ぶりに好敵手と対峙していた。



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