カゲプロ


□儚く強い光の中で
2ページ/4ページ



一応2つ、とバケツに手を伸ばそうとすると不意に腕を引っ張られた。
後ろのソファにゆっくり倒れ込む。
倒れ込んだ側で見慣れた猫目と目が合った。
「どうした?カノ」
「キスしてよ。シンタローくん」
「いきなりだな」
「いーから」
いつものすまし顔に少し固い声。
少しだからか目は変わらないけれど、その差はなんとなく解るようになっていた。
「…こういう時に能力使うなって言ってるだろ」
「別に使ってなんかないよ?」
「修哉」
「っ。…ずるい」
能力を解いたカノの拗ねた顔を覗き込む。
いつもやられてばかりだから何だかちょっと可愛く思えた。
「ん、珍しー」
「うっさい。…で?」
抱きついてカノに問う。
「…何でたまに鋭くなるんだか」
適わないなぁ。そうカノが呟いた。
カノの腕がゆっくりと背中に回される。
「…なんかさ。シンタローくんが消えちゃいそうで…」
「消える?」
「花火の光で輪郭がなくなっていって、気づいたら…って」
微かに震える手には気づかないふりをして、わざと大きく溜め息を吐く。
「消えたりしねーよ。…カノの隣から離れるとかもう無理だから」
「…僕夢見てる?」
「殴ってやろうか?」
「遠慮シトキマス」
言葉とは裏腹にカノの耳がほんのり赤い。
いつもなら絶対しないことをする気になったのは、たぶん普段と違うカノの雰囲気のせいだ。
「不安なら…ずっと一緒にいて見とけばいいだろ?もしオレが消えそうになったら、カノが掴んで引き留めてくれればいい」
ずっと一緒にいて。さすがに言えなかった思いは唇に乗せて送った。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ