企画


□Let's enjoy aquarium!
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とある日曜日。
オレはセトと二人水族館へとやって来ていた。


Let's enjoy aquarium!


「シンタローさん、もうすぐショー始まるらしいっすよ!行きましょう」
「何のショー?」
「イルカとかアシカとかシャチとかトドとか」
全部じゃねぇか。
訊いた意味がなかった。
ていうかショーって一つに動物集めちゃっていいんだな…。
今確実に不必要な知識を得たオレはセトの後ろについて歩き出した。
ふと周りを見渡すとどうやらオレ達と同じくショー目当てらしい人達がたくさんいる。
通路の中の人の流れがぞろぞろと動く光景はぶっちゃけちょっと怖い。
「ところでシンタローさん。何で俺の後ろ歩いてるんすか」
「見失わないようにと盾代わりですが何か問題でも」
「大有りっす」
「わっ」
ぐい、と手を引かれた。
加減してくれたのか転けることはなかったが、手は繋がれたままだ。
ここが休日の水族館だということを思い出したオレの頬にかぁっと熱が上がる。
「馬鹿、離せよ」
「いいでしょ、どうせ会う人もいないっすよ」
「そういう問題じゃ…」
何だかすごく視線を感じる気がする。
顔から赤みが抜けてくれない。
振り払おうとしてもセトの力には適わなくて結局手はずっと繋いだままだ。
「はぐれたらどうするんすか。つか普通にいちゃつきたいっす」
「っはぁ!?お前っつう奴はほんと…!」
「あ、着いたっすよ」
「…ああもう」
諦めて手に込めていた力を抜く。
もういい知らん。
ただ、調子に乗って指を絡めようとしてきたセトは殴っておいた。

ショーも終わり、昼食を採りに行こうと水族館の中庭を突っ切る。
ついでにはしゃいで前に行ったセトとイルカのせいで濡れた服も乾かした。
手は依然繋いだままで、でもいつの間にかに恋人繋ぎに変わっていた。
しかし今日は随分神経の太さがレベルアップした気がする。
最初はすごく周りが気になったのに今はもうどうでもいい。
悲しいスキルを身に付けた、とオレは心の中で涙を流すのだった。

「シンタローさん、ヒトデ触れるっすよ!」
「オレはいい」
「シンタローさん、クラゲも!」
「オレはいいってば」
「シンタローさん、エイも向こうで触れるっすよ!」
「…子供かお前は!」
セトはさっきからずっとタッチコーナーでちびっ子に混ざっている。

正直小学校ぐらいの子供達の中に身長180cm近いツナギ男が紛れているのはかなりシュールだ。
ぶっちゃけ知り合いだと思われたくない。
しかしセトはオレにやたらと声をかけてくる上に何故かセトが子供達と仲良くなっているからかオレもけっこう注目されていた。
居心地悪い。
「つか何でお前だんだん危なさそうな生き物になっていくの?」
それ以前にタッチコーナーにエイって大丈夫なのかそれ。
「そうっすか?見てたらけっこう可愛いっすよ」
「…ないわ…」
ちょっとエイやらクラゲやらに触っているところを想像してみてテンションが下がった。
あのぶよぶよぷよぷよした感触が嫌だ。
「そんなことないっすよ。ほら」
「ぅわ!?ひっ、いやいや無理だから!」
また不意打ちで手を掴まれてセトの手と一緒にクラゲに触れた。
瞬間背筋に嫌な衝撃が走って無理やり手を引き抜いたオレは、その勢いのままセトに倒れ込む。
「あー…。すいません」
「オレこういうの無理なんだって…」
ぷるぷる震えながらセトにくっつく。
何かと触れ合っていないとまたさっきの感触を思い出しそうで嫌だった。
「大丈夫っすか?」
「まあ、なんとか…。…悪いけどちょっとこのままで」
「え、あー、えと」
「何だよ?」
珍しくセトの歯切れが悪い。
怪訝に問えば視線を少し泳がせながらセトが答えた。
「その、さすがに目立ってるっす」
「?…!!わっ、ごめ…!」
すげぇハズい。
我に返って周りを見渡せば、何故か生暖かい目をしたお母さん方や不思議そうな子供達と目があった。
かぁぁぁと顔が熱くなっていく。
もうやだほんと死にたい。
「それより気分、大丈夫っすか?」
「あ、ああ。…あ、ごめん」
「え?ああ、別にいいっすよ」
濡れた手で突いたからかセトのツナギが少し濡れていた。
「すぐに乾くだろうし」
「…次、行くか?」
もうこれ以上この場にいたくない。
セトの手を引っ張って逃げるようにその場を後にした。                            
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