企画


□幸化メランコリー
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「シンタローさん。遊園地、連れてって下さい」
「…いきなりだな。ヒビヤ」
「いいから、遊園地」
オレがいつものようにアジトでだべっているとヒビヤが唐突に言い出した。
相変わらず子供らしくなく堅い言葉遣いだが言っていることは非常に子供らしくて微笑ましい。
ヒビヤがこんなことを言い出すのは珍しくて、オレも珍しく前向きに考えようと思った。
「まあ…もう涼しくなってきたしいいか。あとは誰誘うんだ?」
「誘わないです。シンタローさんと二人がいい」
「コノハとヒヨリも?」
「はい」
訊いて少しびっくりした。
てっきりコノハやヒヨリも一緒に行くのかと思っていたんだが。
オレは不思議に思いつつも再度訊ね直した。
「本当にオレだけとでいいのか?」
「しつこいです」
「…じゃあ行くか」
まだ附に落ちないがヒビヤが言うんだから連れて行こう。
何だかんだでオレも少ないヒビヤと二人の外出は好きなのだ。
それに出かけるにはちょうどいい時間だ。
オレ達は二人、いつかの遊園地へと繰り出したのだった。


遊園地に着いたのは十時を少し過ぎた頃だった。
土曜日だからかそれなりに混んでいる。
園内に入ったオレ達は遊園地らしく早速アトラクションで遊び始めた。

メリーゴーランドにコーヒーカップ、ゴーカート。
氷の迷宮はヒビヤの少し入りたそうな顔に気づかないフリをしてスルーした。
あれにはいい思い出がない。
お化け屋敷は暗黙の了解で見逃しだ。
悲しいことにオレとヒビヤのビビりコンビで入っても結果は見えている。
そうして遊んでいると昼時になっていたので遊園地の中の軽食店で適用に昼食をとった。
その後もぶらぶらと園内を歩く。
この辺りでオレを必死に絶叫系に乗せようとするヒビヤとオレの熾烈な戦いがあったのだが、ここは割愛させていただこう。
ちなみに勝敗についてはご想像にお任せする。

ヒビヤと二人、久々にはしゃぎながら思った。
まあ、こんな休日もたまには悪くない。                            
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