その他


□どうやったって君には届かない
1ページ/1ページ



波乱のジュニアカップが終わった夜。
出場したトレーナーの多くは近くのポケモンセンターに泊まっていた。
もちろん、サトシ達も、シューティーも。

「あ、シューティー!」
ポケモンセンターのロビーでボールの手入れをしていたら、よく響く声がかけられた。
「…サトシ」
「今日はありがとな!悔しかったけど楽しいバトルだったぜ」
「…ふん。君に勝つなんて当たり前だよ」
「っとにお前は口減らねぇなぁ…」
なんかもう慣れたけど。
そう呆れたように呟くサトシにボクの心の中では何とも言えない気持ちが渦巻いた。

いつからだっただろうか。
旅先でこいつの姿を無意識に探すようになったのは。
うるさい単純な奴。
そんな風にしか思っていなかったはずだったのに。
ボクがそのよく分からない気持ちを自覚してから、サトシに会うのは今日が初めてだ。
どういう顔をすればいいのか分からなくて、手元のボールを弄りながら会話する。
サトシはボクのそんな態度を気にせずに話を続けていた。
早く話が終わってほしい。
サトシと話をしていたい。
どこかに行きたい。
サトシと一緒にいたい。
そんな相反する感情が胸の中でぶつかり合って混ざり合う。
本当にボクはどうすればいいのだろう。
終わりなく続きそうだった葛藤は、第三者によってあっさりと終止符を打たれた。

「サトシくん。お電話が入ってますよ」
ジョーイさんの声に思わず顔を上げる。
「あ、ジョーイさん。電話ですか?」
「ええ。シンオウ地方から」
「!シンオウ?…悪い、シューティー。また今度な!」
「…ああ」
ジョーイさんがシンオウ地方と言った途端、サトシの顔が輝いた。
バトルをする時とはまた違う、高揚した表情。
それを見た瞬間ボクは悟った。
そんな顔、サトシはボクには一生向けてくれないのだろう、と。

電話へ一目散に駆けていくサトシ。
見たくない、そう思っているのに何故か目が離せなかった。
嬉しそうに笑うサトシの影から、わずかに紫色が見え隠れする。
頬を染めながらはにかむサトシなんて初めて見た。
ボクはそれを遠くから眺めるだけ。
何でボクはあのサトシの前にいないのだろう。
シンオウとイッシュ。
どれだけ離れているか、君は知っている?
だけどボクは今君とたった十数メートルの場所にいるんだよ。
なのに――なんて遠いんだろう。

初めての恋は、気づく前に終わっていた。


(ああ、ボクは恋に恋をしてただけ)



END



―あとがき―

初pkmn小説でしたー

おぅるはシンサト←シューとかシゲサト←シューとか大好きです
シューティーの叶わない片思いが大好きです←酷い

しかしシューティーの心情とか上手く書けませんでした…
自覚してなかった恋を終わった瞬間に自覚した、みたいなイメージなんですが…
不完全燃焼感がはんぱないですね(^p^)

それではここまで読んでくださってありがとうございました!                            

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ