ねえ、日吉くん!
□わからないもやもや
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「日吉」
何故、この人が二年生の教室にいるのだろうか。もちろん自分に用があってなのはわかるが連絡があるならメールで済ませてしまえばいい話だ。わざわざ教室まで来る理由が見つからない。女子がきゃーきゃーと騒いで迷惑なんだが。
「…はあ。なんですか跡部さん」
わざとらしくため息を吐いて尋ねればこの人はニヤリと笑った。
「最近やけに楽しそうじゃねーの」
楽しそう?最近の出来事の中で楽しくなるようなことは思い当たらない。どちらかと言えば面倒臭いことは増えたが。
「そんなことないです、気のせいじゃないですか」
「…フン、本人が気付いていないだけか」
「何のことを…」
「日吉くんっ」
そこでいつものようににこにこと馬鹿みたいな笑顔で田中がやって来た。田中は跡部さんの姿を見るとビシッと跡部さんを指差した。
「えっ、うわ、跡部様だ!!本物!?」
「こんな人が二人もいてたまるか…」
ぼそっと呟いた俺の声は跡部さんには聞こえていないのだろう。跡部さんは田中をじっと見つめている。そしてふっと笑うと隣にいた樺地に行くぞと告げた。
「ウス」
「邪魔したな日吉。コイツのこと、よろしく頼む」
「え、あ、はい!!」
跡部さんは田中の頭にぽんと手を乗せると何か田中に言ってから教室を出ていった。その光景によくわからないもやもやとした感情が出てきた。何だこれは。
「何て言われたんだ」
「ん?えへへ、内緒ー」
そう言う田中のアホ面にイラッとしたから田中の両頬を引っ張ってやる。
「いはいいはい!!」
「…フン、よく伸びるな」
「ひーよーひーふーんー!!」
あまりにも田中がうるさいからすぐに手を離してやる。
「いきなり何するの!?日吉くんにやり返してやるー!!」
「やめろ」
ぺちっと田中の頭を叩く。いつの間にか先程のもやもやは消えていた。
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