目を剥いて掛けた話
□第 19話 数秒間に
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皆が皆倒れたテレビのほうに目を向けた。
一斉に。
面白いくらい一斉に。
そして次々に大型のスピーカーが倒れた。
目を向けている人たちは不思議なものでも見るような目や驚愕と怯えの混じった目をしてそれらを見ていた。
種も仕掛けもありますよ、皆さん。
やっぱりこれも言わないけど。
「おい!なんだこりゃ……!」
私のことはもう頭にないのだろう。
無精髭君はキサラギ兄から手を離し、その手に拳銃を持ち替えて倒れたものが散乱した方へと歩いていく。
「クオ、キサラギちゃんのお兄さんのガムテープ取るから貸して」
『ほい』
何を?と聞かなくてもわかる。
私の手持ちにある中でガムテープをとる手段の一つにするならハサミしかない。
カノはジョキジョキとガムテを切り、ビッとキサラギ兄の手からはがす。
ちょうど無精髭君が商品棚の下敷きになっていた。
『じゃああとはよろしく頼んだ』
「期待してるよ〜」
こちらを見たキサラギ兄にそう告げるとキサラギ兄はPC用品売り場に走った。
こちら側に来た理由は前に述べたが、それの他に理由がある。
テロリストたちの動きを見るため。
誰かが何かやらかしたとき、または作戦が順調に進み、キサラギ兄が行動を始めたとき、テロリストたちも何かしでかす可能性がある。
それは困るのだ。
キサラギは皆が無傷で助かる作戦を考えたわけなのだから、怪我人が出てしまうのはいただけない。
少しでも力になれればと来たのだ。
結局キサラギ兄が行動したということで、周りに視線を巡らせる。
予想外のことだろうからそう機敏に反応できる奴はいないだろうし、反応したとしてキサラギ兄との距離が近くなけりゃあまり攻撃態勢をとる奴も少ないだろう。
逆を言えば機敏に反応できてキサラギ兄との距離が近い場合、攻撃態勢をとるわけだ。
読みが当たり一番キサラギ兄に近いテロリストが銃口を向けようとする。
『運が悪かったね、君』
私はもう一つの能力を使用した。
あんまり好きじゃないんだけどね。
でも人を苦しめるにあたって【コレ】ほどいいやつを今のところ【目を掛け】たことはない。
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