目を剥いて掛けた話

□第9話 財布の中身
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『いや、キサラギすまなかったな』

「うんごめんね。あぁ死ぬかと思った。まぁ雑談もこの辺にして、じゃあそろそろ出かけようか」

謝罪とは逆のセリフが聞こえた気がしたが話は現在進行中だ。

さっきのは空耳だったと信じよう。

「え?出かけるって……どこに?」

カノは立ち上がり体を伸ばす。

「とりあえず携帯の機種変更しないとでしょ?」

『近所に携帯屋さんあったんじゃなかったっけ?』

「あぁ、確かあったな」

キドはデジタル家電の情報誌をぱらぱらめくった。


「い、いまさらですけど機種変更でどうにかなるんですかね……?」

「ん〜、でもアドレス帳を移したりくらいはできるんじゃない?とにかくそれも聞いてみようよ」

「い、いや、でも……私が外に出たら……」

キサラギはそこで言いよどんだ。

『今日のみたいな人だかりつくるかもってことか?』

そう聞くとコクンとうなずいた。

「あぁ、僕らもついていくから大丈夫だよ。ね、キド、クオ」

「……まあな」

『ん〜……よほどのことがない限りは、たぶん』


キサラギはよくわからないのかキョトンとしている。

カノは楽しそうに笑った。


「キドの【能力】は見てもらった通りだけどね、あれは本質の一部でしかないんだ」

カノはわざとらしく手を広げる。

「もったいぶらずに言うと、キドは【自分】だけじゃなくて【周辺にある任意のもの】も同様に存在感をコントロールすることができるんだ。これを僕らは【目を隠す】能力って呼んでる。つまりーー」

「わ、私のことも消せるんですか!?」

キサラギ、声大きい。

「消すんじゃなくて存在感を限りなく薄くするって感じだね。キサラギちゃんも経験ないかな?自分に注目を集めるんじゃなくて、【何を】【どうしたら】注目を集めるかが、わかってしまうってことーー」

思い当たる節があるようだ。





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