目を剥いて掛けた話

□第1話 少し違った朝
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「1時ちょっと前にここを出ようと思うから買う物買ったらすぐに帰ってきてくれ」

キドは外出の予定があるらしいが、クオは把握していない。

しかしそれが可愛い妹のお願いを聞かない理由にはならないので、深く考えず了解することにした。

「りょーかい。で昼飯何?」

だから昼飯の前に、とキドが言ったところでクオのおなかが鳴った。

キドはまずは朝食からだなと仕切りなおした。

「朝食はとっくに出来たんだがあいつらまだ起きないのか?」

キドが起きるの早いだけではと思いながらクオは誰か起こしてきてあげようと思いつく。

「キド!誰か一人起こしてくるから誰起こしてくるか予想してて!」

「ん、ああわかった」

キドは悪い顔してるなと若干引きながらクオを見送っていた。


実のところクオは既に起こす相手を決めていた。

その相手を起こすために自分の部屋に寄ってたいして厚くもない数学の教科書とスマホを手に取る。

そして目的の部屋に静かに入り、静かに扉を閉める。笑いを堪えるのが大変過ぎて辛い。

スヤスヤと眠っている相手の耳にメガホンのように丸めた教科書をあて、尚且つスマホはカメラモードにする。

これで準備完了である。

すっと息を吸い、

「起きろ、バカノ!」

「うわぁ!!な、何!?」

突然の大声に大仰にびくついて情けない顔をさらしているカノに向けてパシャリとシャッターを切った。

「え?クオ?」


予想通りの反応を見られ、満足しながらの撮った写真を確認する。

「……ふふっ、面白い顔だな」

傑作だった。本当に満足。

カノはいつも爽やかな笑顔でいるから余計に満足している気分だった。

「あのさぁ、人が気持ち良く寝ていたのにそれはないんじゃない?」

カノは先程の驚いた顔からいつもの爽やかな笑顔になって不満を言う。

小さいころからキドと一緒にいるメンバーの一人だ。

「私だから大丈夫。ところで今から飯だ。支度はよ」

だからってさーという抗議の声は空耳としてそのままキドのもとに戻った。





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