目を剥いて掛けた話
□第1話 少し違った朝
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台所に沈黙が訪れる。
このままでは朝食を作ってもらえないのではとクオは考えた。
しかしそれは耐えがたい。
食べられたはずの最愛の妹の料理が食べられない?
そんなことあってはならない。
ならばどうするか。
謝るしかないだろう。
「キド、からかいすぎた。ゴメン」
普通の人から見れば誰もいない台所に一人で呼びかけるという奇妙な行動だが間違っていない。
キドの姿が認識できてないだけでそこに存在はするのだから。
実のところ、目を凝らすかクオ自身の能力を使えば見えるようにはなるが大変な労力を使うので敢えてそれはしない。
一度謝ってからも二、三度謝罪していたのだが、一向に姿を現す気配がない。
最後に謝ってから5分たったところでクオは痺れを切らした。
「キドさーん、いい加減出てきてくれませんかー?」
下手に呼び掛けてみるも出てくる気配はない。
「つぼみちゃーん?」
名前で呼んだら出てくるだろうかと思ったが、出てこない様子。
ならば、とクオは最終手段を使うことにした。
「わかったよ、キド。キドがフリルのスカートはいてるときの写真カノに渡してくるね……!」
いかにも悔しそうに、惜しいように言い、回れ右をしてスタートをきろうとしたその瞬間……
「ま、ままま待て!カノには渡すな!っていうか何がわかったんだよ!?」
キドに腕をつかまれクオは引き止められた。
キドは珍しく慌てたようだ。
「大丈夫だよキド。冗談だから」
元凶は手のひらを返したかのようにニッコリ笑ってキドを安心させる。
クオが大事な写真を渡すわけがない。
よりにもよってカノなんぞに。
「ところでさ、今日の昼飯何?」
先ほどまでのことがまるでなかったかのように話題を変える。
「……まだ朝食食べてないのに昼飯のこと聞くか?」
キドは呆れてしまった。
「いいじゃん、別に」
クオは口を尖らせそっぽを向く。
「昼飯か…何がいい?」
「なんでもいい」
キドが考えるように腕を組みつつクオに尋ねると、クオはバッとキドのほうに向き直り即答した。
キドは一拍置いて一番困る答えだと途方に暮れるような台詞を吐いた。
「でも…何にせよ」
キドは冷蔵庫の中を覗いている。
「買い出しには行かないといけないな」
冷蔵庫の扉を閉めながら少々困った顔をしている。
それを見たクオは買い出しに名乗り出た。
「買い出しには私が行くよ。可愛い妹の手料理のためなら隣町のスーパーへも行けるよ!」
「じゃあよろしく頼む」
キドはクオのオーバーなセリフは無視していつものスーパーへの買い出しを頼んだ。
あ、とキドは何かを思い出したようで、付け加えた。
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