目を剥いて掛けた話
□第 19話 数秒間に
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キサラギ兄はガタガタと震えている。
私、キサラギ兄の立場じゃなくてよかったなんて思えないのはきっと能力があるからだ。
「おいおい震えてんじゃねぇか。さっきの威勢はどうしたんだよ!?」
無精髭君、君にやにやしてるとかキモいよ。
マジで。
髪を掴まれキサラギ兄は引き上げられた。
キドたちはだいじょうぶだろうか。
この状況だしキサラギがちょっと心配だけどキドがうまく引き止めてくれるかな。
「ずいぶん貧弱そうだしよぉ……普段外にも出てねぇんじゃねえのか!?てめぇみたいな引き籠りのクズだったら死んでも誰も困んねぇなぁ?そうだろおい!」
無精髭君が笑いながら仲間たちに話を振れば仲間たちは爆笑した。
まったく何が面白いんだ?
ムカツクわこいつら。
いっそその精神、一掃してやろうか。
そういえば、と思い返した。
カノが意味深に言った面白い【目】とははたしてどういう意味なのか。
絶対作戦外の意味も込めてたよ、あれは。
面白いことをやらかしてくれそうってことかな?
だとしたら、このあと何かあったりして!
期待の眼差しをキサラギ兄に向けた次の瞬間、キサラギ兄の口が動いた。
「……ろよ……」
「あ?なんか言ったかよ。小さくて聞こえねぇなぁ」
バッと顔を上げ、キサラギ兄は言ってくれた。
「お前みたいなクソ野郎こそ、一生牢屋に引き籠ってろよ!」
「やっぱ君面白いよ……!最高」
『うまいこと言うねぇ、君は』
私とカノは同時に声を発した。
そろそろキサラギたちが動くだろうからと私は一度能力を解いた。
能力を解いたので【目を隠す】能力も解かれた。
だから先ほどの台詞はキサラギ兄にも聞こえているだろうし、私の声が聞こえる範囲の人たち、視界に私の姿が映った人たちは驚いただろう。
今までいなかった人物が現れたのだから。
もちろん視界に私の姿が映った無精髭君も驚いていた。
「おま……!」
無精髭君は何か言いかけたが、最後まで言うことはなかった。
だっていきなり大きな音がしてテレビが倒れていましたとかビックリだものね!
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