短編

□I blushed
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ある日のこと。

極楽満月で頼んでいた薬を貰いに行ったのだが白澤様が作り忘れていたらしかった。

そして当の本人は外出中(女の子と遊んでいるとのこと)だったので、桃タロー君に作ってもらい、ちょっと雑談している。

なんだかんだで仕事をしなかった白澤様には少し感謝している。

好きな人である桃タロー君とこうやって話をできるのだから。


しばらく桃タロー君の白澤様に対する愚痴に付き合っていた。

趣旨はやはり女性は怖い、というよりそんな状況をわざわざつくる白澤様が悪いだけなんだけど、という感じだった。

確かに女性って怖いよね……

同性なのにこんなこと言うのもあれだけど。

まあ白澤様は……ね。

もう諦めるしかないんじゃないかな。

なんて思いつつ、ふと別のことを考える。


『ねぇ、桃タロー君』

私が好きって言ったらどうするよ?

「ん?なんですか?」

……。

おおっと待て待て待て。

今声に出てた!?どこまで!?

名前まで?よっしゃきた!

いやいや何もきてないようおおおおおおお!!

『ぁ……っと……』

何となく桃タロー君のことを考えていたら口をついて呼んだだけだったなんて言えやしないので、どう続けたら自然か、貧相なこの頭をフル回転させる。

『白澤様は何であんなに女の子好きなんだろうね?』

なるべく平静を装って心底疑問に思ってるように顔を作って言う。

これでどうだ!?バレてない……よね!

咄嗟とはいえこの質問を選ぶのもどうかと思うがこの際仕方ない気にしない。


少し間が空いてあれ?アウト?と思う直前

「もしかして結羅さん、白澤様のこと好きなんですか?やめといた方がいいですよ?あの人の性癖はきっと治らないでしょうから、後で大変な思いをなさるのは目に見えてますし。女癖悪いのは知ってらっしゃるでしょう?」

いきなり桃タロー君は真剣な顔をしてまくし立てた。

驚いて呆けていると桃タロー君はハッとしてあせあせと苦笑いしながら付け加えた。

「ま、まぁそれでもというならできる限り手助けしますけどね」

とりあえず予想外の返答に私の頭は絶賛パニック中。

どうしてあの人たらしなんだろうね的なこと聞いただけだったよね、確か!


『どったの桃タロー君……?ってか……え!?……いや、え!?』

待って待ってマッチョ、違う違うマッチョじゃないよ。

私が白澤様のこと好きだって?

困惑で挙動不信になる。

「いや、いやいやこっちこそ、え!?ですよ」

『え、いや、じゃとりあえず誤解のないよう言っておくけど私白澤様のこと一部は尊敬してるけど想い人ではないよ?』

そう言えば桃タロー君はホッとしたようで、落ち着いたみたいだった。

「あ、一部だけ……っていうより違うんですか?」

『ああ、違うよ〜。勘違いさせちゃった?』

苦笑いが顔に張り付く。

『好きな人は他にいるもん』

目の前に、手を伸ばせば触れられる距離の、ほんとに近いところに。

「そう……ですか……」

何でそこで残念そうな顔するのさ。

脈あるかと勘違いしちゃうじゃんか。

『まあ白澤様みたいに他の人に優しいってとこは当たってるけどさ』

「いや、あの人は女性にだけです」

そんなキッパリと……笑

まあ、そうだとしても、君が私に優しいのも他の人と同じ事をしてるだけにすぎないんでしょ?

大変なんだよ?

これは私にだけ特別にしてくれてるわけじゃなくて、私に気があるんじゃないって言い聞かせるのは。

「実は鬼灯様……とか?」

桃タロー君はおずおずと名前を出す。

『いや、鬼灯様は余程のことがない限り鬼畜onlyじゃん』

ここは真顔に戻らざるを得ない。鬼灯様はドがつくSだ。

危険だよ、もう。

「何故オンリーだけ英語」

『ツッコミ一丁入りました〜』

「何処ぞのラーメン屋!?」

あははと笑い合う。


えーじゃあ誰だ?

そう言って顎に手を当てて考える桃タロー君

見てると和んで顔が綻んでしまう。





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