アオハライド

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『えっ?
今日双葉ちゃん来てたの?』


今日も陽一の実家で料理をしていたら足りない材料があったため買い出しに出て帰ってきたら双葉ちゃんが来てたことを聞かされた


陽「あぁでもすぐにどっか行っちゃった」


『えー会いたかったなァ』


陽「残念だったね」


陽一は全然残念そうじゃない声で私にそう言った


ガチャと
ドアの開く音が聞こえた
陽一はすぐさま玄関へ向かう
それに私もついて行く

陽「おーーー
帰ったか」


『洸、おかえり』


洸「・・・んーーーー」


陽「メシは?」


洸「・・・あーーーー」


そう言って階段をのぼっていってしまった


『・・・ダメか』

陽「しょうがない」




数分後〜



陽「あ おやじ
おかえり」


『おじさん
おかえりなさい』


父「なんだ陽一とまりかちゃん
また来てたのか」


『皆で食べようと思いまして』


父「夫婦なら2人で仲良く家で食べればいいのに」


『いつでも食べられるんでいいんです
たまには皆で食べないと
ね?』


陽「あぁ」


陽一に同意を求めたら
優しい笑顔で答えてくれる


『じゃあ準備しますね』


そう言って陽一と2人で準備をしていると扉の開く音が聞こえてきた


洸「あーーー
ハラ減ったーーー

俺も食おっかなーー・・・」


『・・・洸』


私と陽一は自然と笑顔になった


陽「・・・・
おーーじゃ 洸はごはんよそって
あとみんなの分の箸もなー」


洸「んーーーー」


するとおじさんも入ってくる


洸「おかえり」


父「・・・・そうか」


おじさんは洸の頭を撫でて自分のイスに座る
その姿に私はまた嬉しくなる


陽「じゃ
食お食お

いただきます」


『いただきます』


洸「いただきます」




陽「うっ」


いただきますの後に陽一が急に泣き出した

陽一の嬉しさを知ってるため言葉と共に苦笑いが出た

『ちょっと陽一・・・』


洸「えーーー」

洸は少し面倒くさそうにそう言ったが
そんなのは気にせず陽一は自分の思いのたけを話し出した


陽「俺さー
こんな日が来るのずっと待っててさー
そしたら絶対笑って
その日を迎えようって
思ってたんだけどなー
兄ちゃんダメだなー」

ポロポロと流しながら自分の気持ちを素直に言う陽一の姿にやっぱりこの人と結婚してよかったなと私は思った


『もー手で拭かないのっ
ほらティッシュ』


陽「ありがとうまりか」


洸「俺・・・母さんがいなくなって
俺だけ家に戻って
俺だけ メシ食っていいのかなって
母さんにしてやれなかった事
俺だけしていいのかなってずっと・・・」


父「おまえたちの母親は
・・・あいつはそういう心のせまい奴では
なかったなぁ」


そう言って私たちが作ったご飯をおじさんは食べる


父「あーーーー
今日の夕飯は美味いなぁ

ほんとに美味い」


おじさんの言葉に私も涙が出そうになった


洸「・・・・苗字のことなんだけど・・・
戻すのはもう少しあとでいいかな

“田中”に戻るのが
やなわけじゃないんだけど・・・

・・・・ただ・・・」


陽「高校の途中で苗字変わるのも
色々あるもんな」


父「そうか 分かった

お前の気持ちの整理がついたらでいい
苗字が違っても
家族であることには変わりないさ」


洸「・・・ありがとう父さん」


あぁやっとここまで来たんだと嬉しくなった
それとともに少し申し訳なさが募って
ポロッと本音がこぼれてしまった


『なんか家族水入らずのところにいるの悪いなァ』

それを聞いた陽一がすぐさま泣き笑いで返してきた

陽「そんなことないよ
まりかも立派な家族だよ」


父「あぁ気にすることない」


洸「・・・・ま一応嫁だしな」


一瞬余計なこと言ってしまったと思ったがすぐさまそう言ってくれた
みんなの言葉に目が熱くなり、こぼれ落ちた


陽「あーまりかまで泣いた」


『だって・・嬉しくて・・・』


陽「全くまりかはかわいいなぁ
洸はあんまり見ないでよ」


洸「・・・はいはい」


『うぅっ・・・自分だって泣いてたくせに』



本当に久しぶりにこの家で暖かい空気に包まれた



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