なまいきざかり

□第一話
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翔が足をひねった。



のに由希センパイのために強がる。



(ばかだねぇ翔は…)


『翔。足出して』


「だからひねってねぇ『うるさい出せあほ』…」


『出たいんでしょ、やるんでしょ
 なら足だしな。わたしが試合中もたせてあげる』


「はっちょー上から」

翔の言葉を無視して続ける


『それならいいですよね?
 部長も由希センパイも』


「おー成瀬さんの腕なら大丈夫でしょ」


「……ほんとに大丈夫なら」


『…心配しないで下さい。翔はそんな柔なやつじゃないですから』


わたしは急いでテーピングを巻く
自分にも翔にも昔からしてるから慣れたもんだ
巻き終わってわたしは翔にしか聞こえない声で言う

『よし。翔、由希センパイのために気合い入れなよ』


「…おまえに言われなくても」


『ふっいってら』


「………」


翔はわたしの頭をひとなでして試合に戻っていった



残り10秒 10点差

それでも翔は諦めなかった
そしてあと5秒のとき


「成瀬ーーー!!!
そのボールとられたら尻ひっぱたくよ!!!


勝とうが負けようがもうどっちでもいい!!
そのボールだけは絶対に決めなさい」


そして言われたとおり翔は最後に入れた
(…かっこいい。翔も由希センパイも)



「ゲームセット 72−65」


「(…何てことを
…木戸先輩の引退試合で私は何てことを…)」


『センパイ?終わりました…
出る準備しましょ』


由希センパイは絶望的な顔をしていた


(由希センパイってわかりにくいって言われてるけど
私からすればすごいわかりやすいと思うけどな)


そのとき整列の声とともに笑い声が聞こえた


(翔が本気で笑ってる…
へぇーやっと自覚したかな)


『由希センパイ。』


「…はっ!どうかした?まりかちゃん」


『このあとの試合後ミーティング、私初めてだから参加しておきたいんで翔のことおねがいしますね?』


「えっわっわかった…
こっちこそみんなのことお願いね…」

『はい。由希センパイみたいにできないかもですけどがんばります』



「ぇ…そんなことは…」


『じゃあお願いしますね!
お疲れ様でした!』


わたしは由希センパイの言おうとしてることはわかったのでさっさと退散する。



(由希センパイ頑固だから手強いだろうけど頑張れ、翔)


翔に心の中でエールを送りながらミーティングのことを考える









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