*短物語

□時間
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「あれ・・・・ここって」


私は周りを見渡す。
高層マンションに点滅する信号。過ぎゆく車達
そして隣には翔太君が倒れていた


「翔太君!」

「寧々・・・・?」


私の呼びかけに目が覚めたのか周りを見渡す


「なぁ、ここって」

「うん。私達戻って来たんだよ」





 そう 現代に





――

少しすると友達の友美が他の友達を連れて私たちの所にやってきた
友美曰く、私たちはあのカメラを触ってから1時間ぐらいしか経ってないらしい
光に包まれそこから私と翔太君がいなくなり急いで先生の元に急いだらしい
だから会った時すごく泣きだしそうな顔をしていたわけだ


「それよりさ」


友美が私と翔太君を交互に見ながら質問する


「何で2人はその格好なわけ?」


そう言われお互い視線を落としてみると着物を着ていたのだ


「こ、これは…」

「これはさっきレンタルして来たんだよ」


私が言えなくて困っていると翔太君が助け舟を出してくれた
翔太君にしか聞こえないように「ありがとう」と言うと
笑顔で「どういたしまして」と返してくれた


「それに2人とも何だか大人っぽくなってない?」

「「気のせい!」」


私たちは否定しようと焦ったのか同時に言葉を発した
それに驚いたのか友美が


「怪しいわね。この一時間でお二人さんは何をしてきたのかしら?」


と冷やかすようなジロリとした目で見てきた


「な、なんでもないってば!友美疑いすぎ!」


普通に答えようとするがやはり焦ってしまう


「着物をレンタルしてきただけだ。それ以上何もなかったよ」


と、冷静沈着に翔太君が言う
そこでやっと折れて
「今頃先生たちは大騒ぎして寧々達の事探しているから見つかったって報告してくるね」
と言って友美達はその場を去った

そこで翔太君と二人きりになる


「やっぱり俺達ってそのまま戻って来たんだな」

「え?」

「ほら、友美に言われただろ?『大人っぽくなってない?』って」

「そうだね。あっちにいたころと全然変わってない」

「俺達は二十歳過ぎてるのにな。同級生なのに他の奴らが年下に思えるよ」

「ふふ。そうだね。私たちだけ先輩になっちゃったね」


私は笑った
だけどすぐ顔を俯かせた


(あの人のいない世界がこんなに寂しいなんて)


ずっと俯かせたままでいると翔太君が私の頭に手をポンとおいた


「翔太君?」

「無理しなくてもいいんだ。」


私はそこで悟った
笑顔を作ったつもりだったのかそれでもその笑顔には寂しさが窺えた


(翔太君も龍馬さんと離れて寂しいはずなのに、私をこんなにも励まそうとしてくれている)


「翔太君も無理しないでよ…」


驚いた顔で私を見たがすぐに


「やっぱり俺って分かりやすいな」


と冗談交じりの笑いで微笑む


「寧々、少し歩こう」
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