short boys

□染まりゆく
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闇夜に紛れた密会

「まァな。遅くなって悪かったよ、少々仕事に手こずったもんでな」

男は懐から黄色いライターを取り出して煙草に火をつけた
それが明かりとなって彼の顔を照らし出す


高杉はそれを恨めしそうに見つめ、隻眼に土方を映した


「だが約束事も守れねェような奴ァ、町を守るなんざ大層なことは言えねぇと思うが」


V字の前髪に白目の多い瞳、そして攘夷志士または政府の者にしか許されない、帯刀

二人はどちらも刀を所持していた
攘夷の高杉、政府の土方



彼らははお互いに、敵同士の筈




ニヤっと不気味な笑みを浮かべたのは、土方の方

「だからすまねぇって。けど今日はいいもん見してもらったぜ」


「どうせ……自分の事を信じて待ってるか検証、とかなんとか言って見張ってたんだろォ?バレバレだぜ」

「それは……」

高杉は呆れたように肩をすくめ、やれやれといった感じで踵を返した

「待てよ。」

それでもザリ、ザリと歩く音は止まない

「それだけじゃない!」

闇の中、土方の煙草の火などとうに消えており土方からは相手の顔はおろか姿さえ見えない
だから程度高杉が遠くへ行ったのかはわからないので、とりあえず叫んでみた



「他になにかあんのかァ?」

このトーンから察するに、案外近いところから声が返ってきたのは言うまでもない


そんな恥ずかしさを隠すかのように、土方は答えだけを話す


「……5」



五とは、いったい何を指すのか
それは高杉にもすぐにわかることとなった



「2……1、お誕生日、おめでとう晋助」


「……なっ、」


「"なぜそれを知っている?"ってそりゃあ調べたからに決まってんだろ」


さぞ楽しそうな声色に高杉は、真選組ってのは敵の誕生日なんか調べてんのかよ、というツッコミを思い付いたが水をさすようなので止めておいた

そのかわりに、本当に言いたかったことを伝える

「"なんで名前を……"が正解だ、阿呆」



それを聞いて、ゲラゲラと笑い出した土方


「そりゃあ照れたってことでとっていいんだよな?」


「う、るせェ……」


墓穴を掘った高杉はさぞ顔を赤らめているところだろうが、生憎の暗さで見えづらい


「ちっ、可愛いとこ見そびれた〜」








今日はどっか泊まって行こうよ、欲しいモンやっから


高杉が電灯のもと囁かれ、頬をピンクに染めた顔を見られたのはまた先のお話……



-continue?-
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