short boys

□待つということ。
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「トシ……」

ベッドに寝ていた銀時はゆっくりと体を起こす
まだ夢を見ているみたいにふわふわとした感覚が彼を襲うが、それでも目覚めたくて無理やりベッドの端で足だけを降ろした

大きく欠伸をして、眠い目を擦る
忙しくパジャマから隊服に着替えている土方を、少しでも目に留めておきたかったから

「悪ぃ、起こしちまったか?」

申し訳なさそうに話す彼は、昨夜の獣とは別人のようだ

「別に……」

すっと銀時はそっぽを向いてシーツを掴んだ



本当は、土方の携帯の無機質な着信音が鳴り響いた時からうっすらとは起きていた
だけど土方がワンコールで素早く取って、そーっと俺の方を見るものだから、なんだか可笑しくて二度寝しちまった


だけどそんなことしなけりゃよかった
その着信は近藤からのもので、あと数刻もすれば彼は出ていってしまう

「今度は、いつ帰れる……?」

答えはいつも同じ
わかりきってることなのに

「すぐ帰るって。」



うそ……
ひとつの山にぶち当たれば事が収まるまで抜けられなくなるくせに

朝まで待っても帰ってこない
そんなことは日常茶飯事で


「銀、待ってろよ」


え……?

いつもはそんなこと、言わない


"飯、待たなくていいから"
"先に寝てていいよ"
それがいつも。


「どうし…っ?」

「やっぱりお前は、…なんでもねぇ」
ふわっと笑って、くしゃりと癖っ毛を撫でた
そんな土方に目を奪われるのは何度目だろう
だけど久しぶりだ
嬉しい、かも……


「わかった、待ってる」




ぎゅ、と土方の刀を握りしめて玄関で手渡す

無事に帰ってこれますように。

攘夷浪士を相手取る大変さは尋常じゃないだろうから心配だ

実際、俺の方が強いんだろうし、桂や坂本、あとは高杉らを敵にまわす大変さなんてよくわからないけど

何かあったらすぐにでも駆けつけるつもりではいるけど、やっぱり土方が傷つくだけでも嫌だ



「行ってらっさい」

「あぁ、行ってくる」



チュ、とキスを交わす

「……ん、んぅ!?…ぅ、は、ちょ…ひじかッ」

いつもの触れるだけのキスはどこへ?
深いキスなんて滅多にしないのに。

*
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