short boys

□アプローチ
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ブッと高杉は飲みかけた珈琲を吹き出した。
一瞬にして目の前の机は茶色く染まり、慌てて机の上の書類に飛び散った水滴を手で払った。

「な、なな何言った?」


普段は授業中だろうと煙管を吹かしていて、
どんな生徒がいようと生徒が何しようと動じない筈の高杉が、
こんなにベタな動揺をしている。

そんな様に、事の発端である銀時はにやりと悪い笑みを浮かべる。


「だから、聞こえてねーの?」


片腕をぐいと引っ張って自分の口に高杉の耳が近づくようにする。

「お前のこと、好きだって言ったんだよ」

「……ばっ!?おまっ」

高杉は、放ってきた直球の対処法がわからず、かあと顔を紅潮させて思わず銀時を突き飛ばした。

派手な音と共に宙を舞う銀髪の人間
あまりにも豪快なアクションに、
スローモーションで顔を歪ませているかのように見える。


「痛ぇじゃねーかッ」


頭を擦りながら怒る銀時。
すっ飛んだ拍子に坂本先生の机に頭をぶつけたらしい。

それにしても彼は頑丈だ。
人間、普通衝撃を喰らった直後の身体でそんなに早くコメントできるのだろうか?
否、できないだろう。

銀時だからできる芸当である
高杉が先生と生徒という立場を無視してまで度を越したスキンシップができるのはそれを見越してのことだ。





ーそれにしても…よく吠える野郎だなァ



なんて呑気に考え出した高杉は、先程酷く動揺していた人物とは別人のように冷たい視線を向けた。


「お前じゃあねェ、"高杉先生"だ」

「…え?」


いきなり素に戻った高杉に唖然とする銀時。

"お前"呼ばわりした時からだいぶ時がたっているのだが、それを話題に持ち出せるということは、
いつもの冷静さを取り戻してしまったということで。


ーちっ、しくじったか……っ


と思ったのも束の間、

「あァ?どういう意味だ?」

正確には声に出ていたらしい…

「あ、ぁぁあ…いや、違うんだってこれはっ、その…っ」

「俺をからかってご満悦かァ?とっとと帰りやがれ、変態。」

「あ、おい待てって!」


教師高杉はとても教師とは思えない口調で銀時を職員室から追い出すと、
残業という形で残った書類を片付け始めた。


たった今までいた部屋の中からガチャリと施錠の音が聞こえると、流石の彼でさえ為す術はないと悟った。
銀時は共に投げ出された鞄を掴んでとぼとぼと帰路についた。




「はぁっ、たく…なんなんだよ……」

という悩ましい声とペラペラと捲る紙の音が職員室にぽつりと響いた
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