短編小説

□ボクのスキナヒト
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「朝よ〜早く起きなさい。」
ボクを起こす母の声が聞こえた。
「は〜い。今行くよ。」
ボクはまだ開ききっていない目を擦りながら、一階のリビングまで降りていく。

ボクの名前は、橘 渉(たちばな わたる)
幸聖高校の二年。部活は……帰宅部をやってます。とりあえず、暇をもて余した犬獣人です。

後、ボクの通っている幸聖高校は男子校です。なので、雄好きな方が多いです。あ、言っておくけどボクはバイだからね。

「いってきます〜」
今日も学校か。めんどくさいな。などと心の中で嘆いていると、
「おはよう。」
と後ろから声をかけられた。

「あ、凍哉。おはよう」
白神嶺 凍哉(しらがね とうや)

ボクの友達。狼獣人。
同じクラスで、結構気が合うんだ。
凍哉とは、中学の時からの親友。

「渉、知ってるか?今日、うちのクラスに訳あって転学してくる奴がいるんだぜ。」

「え、そうなの?全然知らなかったよ。」
ボクは、知らなかった。その出会いが、ボクを変えることになるなんて。

「おいおい〜昨日先生言ってただろ。」

「あれ〜そうだっけ?」
自分にあまり関係のない事は、あまり聞いていない。

「おいおい〜しっかりしてくれよ」
凍哉が、少し呆れ気味にそう言ってきた。


「別に良いでしょ。」
ボクはちょっと恥ずかしくなった。

「まあいいけどよ。ところで、今何時なんだ?」
そう言うと、制服のポケットから携帯を取り出して、時間を確かめた凍哉の動きが止まった。
そして、ボクにこんな質問を投げかけてきた。


「おい、朝のHRって何時からだ?」
凍哉は誰でも分かる事を聞いてきた。

「はぁ〜大丈夫か?人のこと言えないくらいにヤバイんじゃない?八時三十分からでしょ。」
軽く馬鹿にしてやった。しかし、返ってきた答えは、予想とは全然違うものだった。


「マジかよ・・・後、三分しかねぇ・・・」
はい、スルーですか。分かります。
って、

「はい?またまた〜冗談ばっかり言うんだから〜」
ボクはまた凍哉が僕を脅かそうとして冗談を言っているのだと思ったが、念のために自分の制服のポケットから携帯を取り出して確認してみた。

しかし、彼が言っていることは冗談なんかじゃなかった。

「凍哉、これってヤバイパターンだよね?」
ボクは夢であってほしいと願いながら、再度凍哉に問いかけた。


「あぁ、ヤバイな・・・とりあえず、走るぞ。」

「分かったよ。」
ボクは運動は得意じゃなかったけど、その時は必死だった。

まあ、そんなわけで間に合うはずもなかった。

「またお前ら遅刻か。何してたんだよ?早く席につきなさい。」
この声の主はボク達のクラスの担任。
紅羅葉 奈希砂(くらば なぎさ)先生。
歳は、二十七歳。雄の猫獣人の優しい先生です。
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