成り代わり少女の荒稼ぎ
□北の森で
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――in北の森
「神楽、頑張ってー」
目の前で繰り広げられるぬいぐるみたちのシュールな戦い。ベアと私の神楽の一騎打ちよ。今のところ、互角の勝負を繰り広げていわ。
ああ、紅茶がおいしい。ベア、腕を上げたわね。
熱い闘志をその眼に秘めて生き生きと戦う二体の勇士を見物しながら、私は二体が入れてくれた紅茶を飲む。これがここにきて、ベアを見つけてからの私たちの日課。
ザァ…、と風が吹く。
「ここかあー北の森。いくぞーー!!」
「み…蜜柑ちゃん、気を付けて行動しようね!」
あら、蜜柑。来たの…? それと委員長も。
「この森にはいろいろ“変なの”がいるっていうから」
そうね、“いろいろ”居るわね。
優雅にお茶を飲む慧の目の前で、どうやら決着がつかなかったらしい。引き分けだ。神楽とベアが戦闘を止め、斧を手に第二ラウンドに突入した。
「いろいろ変なの?」
「えっと例えば……」
カコーーーン…、カコーーーン…、斧を振り下ろす音が鳴る。
「はっ…!!」
青ざめた表情の委員長と不思議そうにきょとんとしている蜜柑。二人は振り向き、ベアたちを発見した。
「あ…、あの音は…?」
慧の目の前で神楽とベアが薪を積み上げる。つぶらな瞳に闘志を燃やしてすごい速さと正確さだ。良い音が鳴っているわ。
怯える委員長、音の出所を探す蜜柑。私は優雅にお茶を飲み続ける。
「え…、……くま(テディベア)とパンダ人形?」
闖入者に二体は斧を一旦置き、彼らの方を見据えた。