最遊記

□Blame
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悪夢を見た。
夢の中の百眼魔王は花喃を本気で愛していて、花喃もその想いに応えるように抱かれていた。
その二人を、何も知らずに僕が引き裂いた。
愛する人を喪った花喃は絶望し、後を追うように自殺したんだと。
僕への謝罪は、僕を裏切ってしまった事に対するもので…

百眼魔王の非道な噂を聞く限り、そんな事がある訳がない。
けれど、噂が真実と違っていたら?
百眼魔王は僕の目的が花喃の奪還だと、逃げ延びた部下から聞いていた。
広い城内で、立ち向かってくる敵を全て殺して捜し回るのは、かなりの時間を費やした。
百眼魔王が逃げも隠れもせず、花喃を人質にさえしなかったのは、己の力を過信していたからか、それとも王としてのプライドか。
そのどちらかだと決め付けて、疑わなかった。
だが、花喃を人質にしなかったのではなく、出来なかったのだとしたら?
花喃が百眼魔王への生贄として拐われたと知った時、彼女の生存に絶望的な思いでいた。
花喃の気質を考えれば、早い段階で殺されるか自殺するかは明白に思えたから。
それでも生きていると信じたかった僕は、一年かけて百眼魔王の城に辿り着いた。
奇跡的にも無事だった花喃は、化け物の子を孕った事を告げると、僕の目の前で自殺した。
花喃がそれまで生きていたのは、自殺が出来ないような脅しを受けていたんだと思っていた。
けれどそうではなくて、百眼魔王を愛していたからだとしたら?
そんな事、あり得ないし考えたくもない。
なのに、あんな酷い夢を見るなんて…
理由は判っている。
全て…三蔵のせいだ。


「…そういうの、要りませんから。快楽なんて望んでないんで、止めてくれませんか?」

巧みな愛撫を止めて欲しくて、僕は冷めた声で言った。
彼は中性的な容姿で偏見を招くが、淡白そうな見た目を裏切り、決して一回では終わらない。
そんな彼に何度も抱かれて、気付いた事がある。
すこぶる機嫌が悪くて最初は乱暴に僕を犯しても、一度達せば気分がマシになるのか、その後は抱き方がガラリと変わる。
欲を満たす為だけの、貪るような荒々しい口付けが、いつしか快楽を注ぐような優しいものになっているように。
最初はただの気まぐれか何かだと思っていた。
けれど、そうじゃないかもと疑い始めてからは、それを受け入れる事に抵抗を覚えた。

「俺が気を遣ってやってるとでも?貴様の反応が面白いからやってんだ。勘違いすんじゃねぇ」

不満を露わに睨む彼はそう言うと、僕の首筋に唇を当て、嫌がらせでしかない所有の印を刻んだ。

「…酷い人ですね、貴方は」

熱く感じるその痛みに耐えながら、彼の心無い言動に僕は諦めた声で力無く呟いた。
顔を上げた彼は無抵抗な僕を見下ろすと、フンと鼻を鳴らした。

「願ったりじゃねぇのか?俺を恨めば、姉の気持ちに近付けんだろ?」

再び僕の性感帯を刺激しだした彼に、「花喃はそんな風には…」と反論しかけた。
けれど彼の意図がそれを気付かせる事だと感じた僕は、続く言葉を飲み込んだ。
彼が恨めしくて、質問する声も震える。

「…そう、言いたいのですか?」
「だったら何だ?心と体は必ずしも一致する訳ではない事は、お前はもう経験済みだろうが?」

残酷な事実。
例えそうだとしても、それでも僕は否定したかった。

「そうですね…。僕達と同じで、あの二人の間にも『愛』なんて無かった…」

惨めな強がりを言う自分に、思わず苦笑が漏れる。
心ここに在らずで薄く笑う僕に、彼は舌打ちをした。

「気に入らねぇ。くだらねぇ事ばかり考えやがって。もう何も、考えられないようにしてやるよ」

苛立ちをぶつけるような口付けは、僕の全てを奪うように強引で…
それでも…熱を帯びた貴方の美しい瞳が、僕を勘違いさせるから。
そこには『愛』など無かったんだと、僕は自身に言い聞かせた。

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