最遊記

□EVEN A WORM 3.5
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八戒が風邪を引いた。
雨の中、大勢の怪我人の治癒で気功をぶっ続けて使ったせいだ。
買出し担当の八戒が、代わりの適任者として指名したのは悟浄だった。

「猿、お前も来るか?」
「悟浄。以前も言いましたよね?悟空と2人だけで買出ししたら、余分な物を買って来るから駄目ですって」

ベッドから上半身を起こした八戒が呆れ顔で忠告すると、側のミニテーブルの椅子に腰掛け、我関せずな態度で新聞を読んでいた三蔵が突然口を開いた。

「構わん。猿、お前もついて行け。煩いのがいたら、八戒が休めねーからな」

三仏神のゴールドカードを悟空に投げ渡す三蔵に、悟浄のおちょくる声と、悟空の驚きながらも嬉しそうな声が同時にかかる。

「三蔵様ってば、八戒にはやっさしぃ〜」
「えっ⁈好きな食いもん色々買っていいの⁈」
「今回は許す。それに神様の時みたいに、疫病神が単独行動を起こすとロクでもない事に巻き込まれ兼ねんしな」

悟浄を完全に無視した三蔵が悟空にそう言うと、買い物リストを作っていた八戒も手を止めて悟空を見た。

「…それもそうですね。じゃあ悟空、悟浄の面倒をよろしくお願いします」
「うん‼判った‼」

八戒の酷い言葉に内心傷ついた悟浄は、その不満を三蔵にぶつけた。

「俺は猿以下かよ…てか三蔵と悟空で買出ししたらいいんじゃね?」
「何故話が突然そうなる?」

悟浄は睨みつける三蔵を見てニヤリと笑うと、キョトンとする八戒に視線を向けた。

「どうせ悟空と三蔵は人の看病なんかした事ねーだろ?八戒の側にいて役に立つのは俺位だって。特に三蔵はか弱い人間だから、風邪移るかも知れねーぜ?」
「誰がか弱くて、看病もロクに出来ないだと?節穴な貴様の目に鉛弾を詰めて、その穴塞いでやろうか?」

眉間に深い皺を刻んだ三蔵が懐から銃を取り出した時、八戒が思慮深く呟いた。

「僕の看病は別として、悟浄の言い分は一理有りですね。妖怪が風邪に強いのかは分かりませんが、馬鹿は風邪を引かないらしいので、悟浄には気を使いませんが…三蔵、外の新鮮な空気を吸って悟空と気晴らしして下さい。荷物持ちは悟空独りで大丈夫でしょうから」
「お前まで何を言…」
「ギャハハ‼馬鹿って酷ぇ言われようだな⁈悟浄‼」

三蔵の抗議は、悟空のバカ笑いで虚しく掻き消さた。こめかみを引くつかせる三蔵を他所に、続けて悟浄が漫才のような隙のない突っ込みで口を挟む。

「バカ猿‼テメェに言われたかねーよ‼…しかし三蔵、今夜の部屋割は、俺と八戒が同室な。」
「ざけんな‼看病を理由に2人きりになって、弱った八戒を襲うつもりだろ⁈」
「⁈変な事を言わな…ゴホッ…ゲホッ」


三蔵の銃口が悟浄の頭に狙いを定める。
2人の争いを八戒は止めようとするも、激しく咳込みそれどころでは無い状態だ。
心配した悟空が八戒に駆け寄りその背中をさする中、悟浄は三蔵の怒りを更に煽る言葉を平然と口にした。

「テメェじゃあるまいし、そんな鬼畜な事するかよ。まぁ確かに、熱で潤んだ瞳や、荒い息遣い、弱々しい鼻声なんかは妙に色っぽくてそそられるけどよ…って、うわっ⁉危ねえだろ⁈」

二発の銃弾を辛うじて避けた悟浄に、なおも銃口を突き付けながら三蔵は怒鳴った。

「死にたくなければ、早く悟空を連れて部屋を出ていけ‼」

悟浄が逃げるように部屋を出ると、続いて悟空とジープも後を追った。
静まり返った部屋で、八戒は重い溜息を吐くと三蔵に愚痴た。

「三蔵…悟空の前で、変な事を言わないで下さい」
「お前が悟浄に警戒心無さ過ぎだからだ」
「悟浄は貴方をからかってるだけですよ。彼は女にしか興味ないですから、僕を襲う訳が…ゴホッ」

再び咳き込みだした八戒は片手で口元を押さえながら、傍の台に置かれた飲みかけのペットボトルに手を伸ばした。
しかし八戒より早く三蔵はそれを取り上げると、中の水を一口飲んだ。

「…風邪、移りますよ」
「この程度で移らねーよ。カッパの言う事を真に受けるな。看病してやるから甘えろ。水が欲しいんだろ?」

そう言うと、三蔵は八戒に視線を合わせたまま再び水を口にする。
美味しそうに水を飲むその姿に、八戒はゴクリと喉を鳴らした。

僕の喉がカラカラなのを承知で僕の水を飲むなんて、明らかに嫌がらせだ。
僕、そんなにムカつく事言ったかなぁ。

熱で浮かされた頭でそれ以上考える事が辛くなった八戒は、戸惑いながらも、そのまま黙っていれば残りの水を飲み干しかねない三蔵に重い口を開いた。

「…ええ。だからそれを…んっ…」

八戒の掠れた声は、三蔵の唇で遮られた。
予想外の三蔵の行為に、八戒の身体はビクリと強張る。
しかし口内に欲していた水が満たされると知った八戒は、貪るように三蔵の口付けを受け入れた。
口移しで与えられた少量の水では、当然の事だが八戒の渇いた喉を満足に潤すまでには至らなかった。
本能のままに、八戒の舌が微量の水をも吸い取ろうと、三蔵の口内に侵入する。
満足気に瞳を細めた三蔵は、それに応えるように舌を絡めた。

「…違っ…水…もっと……ぁん…」

八戒は唇を離して水をせがんだ。
再び口移しで水を与えた三蔵は、両手で八戒の頭を包み込むと、先程より激しく口内を蹂躙し始める。
朦朧とした意識の中、我に返った八戒が三蔵を腕で押し退けようともがくと、逆にベッドに押し倒された。
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