最遊記

□美味しい思い
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今日も宿で八戒はキッチンを借りて、おやつのデザートを作っていた。

「…やり過ぎましたかね」

八戒は作った特大パフェをお盆に乗せて、悟空達のいる部屋へと一歩一歩慎重に足を運んだ。

(悟空にせがまれてパフェを作ったのはいいですが、張り切りすぎて特大になってしまいました…。
きっと1人で全部たいらげるでしょうが、落とさないように持って行くのが大変ですね)

歩く度に揺れる渦高く巻かれた生クリームに眼を落としながら、キッチンのドアノブを引こうと手を伸ばした瞬間、
バン‼
「パフェ出来た⁉手伝うよ‼」

悟空のウキウキした元気な声と共に、ドアが勢いよく開かれた。

「あれ?…八戒、何処?」
「…ココです…悟空」

か細い声の出処であるドアの裏側を悟空が恐る恐る覗くと、そこには顔からパフェを被って胸元まで生クリームを垂らした八戒が、わなわなと震えて立っていた。

「八かっ…ゴメン‼」
「…手伝おうと、してくれてたんですよね?」

真っ青になりながら謝る悟空に、八戒は引き攣った笑顔を見せて、そう尋ねた。

「…うん」

しょんぼりと頷く悟空。
態とではない悟空が今にも泣き出しそうな顔をするので、怒りをぶつける事が出来ない八戒は溜め息をついた。

「…気にしないで下さい。ただ、ドアを乱暴に開けると危険なので、今度からは気を付けて下さいね」

八戒が優しく注意すると、悟空の顔がパアッと輝いた。

「うん‼今度からは気をつけるよ!」

真剣な表情で素直に言う悟空を見てクスッと微笑った八戒は、悟空に優しい声でお願いをする。

「悟空、雑巾取って来てくれます?僕が歩くと床を汚しちゃうんで」
「…そのパフェ、もう食べられないの?」

ドアの衝撃で床に落としたお盆と、空になったパフェグラスを拾おうと屈んだ八戒に、悟空の残念そうな声がかかった。八戒は眉を八の字にさせて答える。

「…ええ。でも、まだ材料は在るのでもう一度作りますね。それまで待ってて下さい」
「えー⁉捨てるなんてもったいないよ‼床についてないやつなら、綺麗だから食べられるじゃん‼」

悟空は八戒の胸元に付いているスポンジの塊を指でなぞる様にすくい取ると、その指を舐めた。

「ちょっ…悟空⁈」
「超〜旨いよ⁈動かないで!落ちたら食べれないじゃん‼」

更に悟空は、八戒の両肩を掴むと鎖骨の窪みに溜まった生クリームを直接舐める。

「あっ…やめッ…」

ビクッと身体を震わせた八戒を、悟空は床に仰向けに押さえつけた。

「ジッとしててよ。動くから服の中にスポンジが落ちたじゃん」
「悟空⁈待ってッ…‼」

悟空は八戒の肩を押さえながら、シャツのボタンを上からひとつずつ外していく。
綺麗なピンク色の乳首が露わになり、その小ぶりで柔らかそうなトップには、甘い匂いのクリームとスポンジの塊が引っかかっていた。
見つけて嬉しそうに微笑む悟空と、それを見て青ざめる八戒。

「いただきまーす‼」
「やっ‼…あんっ」

クリームと一緒に乳首をペロペロと舐め上げられた八戒は、耐え切れずに甘い声を漏らした。

「…どうかしたの?八戒?」

思わず声を漏らした恥ずかしさで赤面しながら口を押さえる八戒は、何も言えずにただ首を横に振った。
ジャキ‼
聞き慣れた金属の摩擦音と共に、馴染みのある硬い物が悟空の後頭部に押し付けられる。

「どうかしてるのは貴様の頭だろ?」

地を這う様な低い声に、ただならぬ殺気を感じた悟空が青ざめながら振り返ると、鬼の様な形相の三蔵が銃口を向けていた。
あまりにも恐ろし過ぎて、固まる悟空。

「三蔵‼殺さないで‼」

必死に叫ぶ八戒の言葉から伺える、恐ろしい予想が現実になろうとした瞬間、悟浄が三蔵を背後から羽交い締めにした。もがく三蔵を押さえながら、悟浄は必死の形相で悟空に叫ぶ。

「悟空、逃げろおぉぉぉぉッ…‼」
「お、おう!サンキュ、エロガッパ‼」
「チッ!待て悟空‼」
「待てサル‼何がエロガッパだ⁈」

ワケも判らず一目散に逃げる悟空の背中に、三蔵と悟浄のキレた叫び声がかかった。

(食べ物で意地汚い真似をすると、三蔵に殺されかけるんだぁ。これからは気をつけないと…)

食い意地が酷い為に、マトモな食事にありつけない事を身をもって知ることになった悟空が、再び宿に戻れたのは夜ご飯の時間を遠に過ぎた夜中だった。

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