短編

□青い部屋
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オサムちゃんの部屋は狭い。腕を伸ばせばすぐに窓にとどく。俺は寝転がったまま、布団の中から手を伸ばした。
少しだけ窓を開けて空を見上げた。灰色の雲が歪んで見える。
後ろではオサムちゃんが背中を向けながらタバコを吸っているのだろう。タバコの匂いが鼻をついた。ピアスをたくさんつけ髪の毛をたたしてはいるものの、タバコは吸わないので種類まではわからないがそこにオサムちゃんがいることが解ればそれでいい。

「……」
「……」

二人とも、何も喋らず居心地の悪い沈黙が続いている。

俺らは、先生と生徒で、それ以前に男同士で。世間に認められないことくらいよく解っている。それなのに…
昨日の夜の痕跡が今だはっきりと残っているシーツを握り締める。
昨日、親がオサムちゃん家に乗り込んできた。近所中に響き渡るようなでっかい声で
「うちの息子を返せ。お前のせいで道外れよんや。それでも教師か、生徒誘惑しよってこのロリコン」
とオサムちゃんを非難したのだ。ロリコンやなくて言うんやったらショタコンな、なんて言えるはずもなかった。

ぽたり

涙が頬を伝いシーツに吸い込まれる。

もう、終わりだ。

オサムちゃんとの関係は。そんな予感はずっと前からあったのに、いざとなると悲しくて仕方がない。
すぐ後ろにいるというのに、オサムちゃんが凄く遠く感じる。腕を伸ばせば触れるけれど、そうしたらこんな醜い感情を全てぶつけてしまいそうだった。

俺がこの部屋に転がり混んでからは青い物が増えた…気がする。青を基調としたこの男二人には狭苦しい部屋が俺は、大好きだ。この部屋の色は、まるで二人の心の色なのだろうか。

今にも雨が降りそうな空は、空は?
この沈黙を雨音が掻き消すときには、別れを切り出されるのだろうか。
あんなにも楽しかった二人の時間は、それでも消えずにあるんかな
教えてや、オサムちゃん。

答えが出るはずもないし、今更どうすることもできんし、考えるのを辞めた。

オサムちゃんはいつも、寂しい目をして俺を見る。それが堪らなく怖かった。その寂しさが俺には埋められない。だから…だから…

愛してる。多分、この世で1番。
でも、たったそれだけの話。
どれだけ愛しても、オサムちゃんの寂しさを解ってあげれなかった。

オサムちゃんが全く喋らんのは、傷ついている証拠や。
俺なんかのせいで傷付くぐらいやったら、サヨナラをたたき付けてくれ。
きっとオサムちゃんは優しくて、優しすぎるからそんなことできひんやろ?
そんな優しさいらんから。お願いやから、自分が幸せになれる道選んで…。
根性なしやから、俺からは、言えんから、お願いやから



オサムちゃん


愛してる


本当に


ホントに。














end...
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