短編

□暗黙の了解
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「いいよな、赤也は。毎日恋人に会えて」

赤也と柳が二人できゃっきゃうふふとしているのを遠巻きに見ながらブン太がぼそりと呟いた、ここが人通りの多い交差点とかなら聞き逃してしまいそうな小さな声で。だが生憎ここは部室なわけで隣にいた俺には全部聞こえてしまう。

「俺なんて一週間に一度しか会えないんだぞ」

俺なんて月に一度だぞなんて言葉は言ったとしてだからなに?ってなりそうだったから飲み込んだ。

「それなのにあいつらは毎日会えんだぜぃ?あー赤也がうらやましい」

なぜ赤也だけなのか、柳もじゃん。俺からしたらブン太だって羨ましい。

「あいつら見てたらジロくんに会いたくなって来たから今日の部活休んでいい?」
「だめに決まってんじゃん」

えー、お願い幸村くんとか言ってるブン太をスルーしつつラケット片手に部室を出る。部活開始時刻まであと少しというのに、ほとんどコートに人が集まってない。なんだよ、一秒でも遅れたら特別メニュー追加してやる。

3、2、1、0 来てないレギュラーメンバーは…ブン太と赤也か。特別メニュー追加決定。あ、今出てきた。赤也はばたばた走ってこっちに来て、ブン太はゆっくり歩いてくる。大方赤也は柳と話てて時間がなくなり焦って準備したけど結局間に合わなかったのだろう。因みに柳はもうコートに出てきている。ブン太はどうせ芥川にでもメールやら送っていたのだろう。

「はぁ…部長、セーフっすよ…ね?」
「だめ、一分遅刻。特別メニュー追加」

いつもなら一分くらい多めに見てくれるのに?と二人して驚いてる赤也とブン太にとりあえずグランド50周ねとにっこり。

「なっなんでそんなに機嫌悪いんだよ、幸村くん」
「え?100周がよかった?」

焦るブン太と増やされては堪らないとさっさと走りに行った赤也が対照的だった。俺の機嫌が悪い理由なんてひとつしかないだろ、ブン太め。

「お前さんがさっき部活で芥川に会うとかなんとか言うとったじゃろ」
「え?あっああ、週一でしか会えねぇって話の?」
「そうそれじゃ。よう考えてみんしゃい、幸村なんて月に二回会えればいいところじゃよ?」
「あっ…!!ごっごめん、幸村くん」

流石仁王。よくわかってる。ご褒美に頭を撫でようとしたらワックスで固めた髪がちくちくしたからやめた。ついでに立たせた髪の束を2、3本折ってやった。何するんじゃと言われたけど別に平気そうだったからよしとしよう。









Title by JUKE BOX.

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