Novels.

□初めてのボク、経験豊富なキミ。
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今日で裕也の家に来るのは三回目。



つまり月に一回は彼の家に行っている。




もともとがお互いアウトドアなものだから、
ほとんどのデートを外で過ごしている。



『お家デート』というものが珍しいのだ。




だが、今はそのお家デートよりも珍しい、


夢にも思っていなかった出来事が起ころうとしているのだ。





つまり、彼の家に『泊まり』は今日が初めてなのだ。




家についたボクは、久々の裕也の家の匂いに浸るように深呼吸をする。




おじゃまします、と家の中に入れば、いつものリビングに通される。



「荷物、俺の部屋に置いとくから。」



「ぁ、うん、ありがと!」




いつもより荷物が多かったから、半分裕也が持ってくれていた。



そんな裕也に心でお礼を言いながら、
さっそく料理の準備をする。



戻ってきた裕也が、「何か手伝おうか?」と後ろから顔を出してきた。




「いいよ、別に。裕也はゆっくり……ぁ、お皿だけ出してもらっていい?あとお茶碗。」



「あいよー。」




二枚ずつお茶碗と皿を出してテーブルに並べてもらう。




「他には?」



「後は大丈夫。任せて、おいしーの作ったげる!」



見てなさいよ!!と腕を回しながらボクは調理台に向き直る。




「じゃあ俺、風呂入ってくるよ。」




バスタオルを肩にかけて、優しくそう言ってお風呂場に向かった。





「はーい。


……お風呂かぁー。


…いつか一緒にーとかって言われるのかな。」




何を思ったのか、ボクは滅多にしない『妄想』をした。














「……………。」















ガシャンッ







突然持っていたお玉を落とした。






正確には手から滑り落ちたというのだろうか。



それにプラスして、顔が熱を帯びている。






ガラスに映るボクの顔は真っ赤だ。





お玉を拾ってお風呂場から声がかからないか様子をうかがう。




どうやらシャワーの音でこっちの音は聞こえなかったらしい。




ホッと息を吐いて胸を撫で下ろす。






先ほどの妄想を振り切るように頭をぶんぶんと左右に振って、


再びボクは調理に集中した。





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