Novels.

□好き、怖い、矛盾。
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あの喧嘩から2ヶ月。




ボクは先月、バイトを合格しました。





裕也に合格したことを伝えたら、
少し素っ気ないながらも応援してくれた。





そのうち慣れてくれるだろうと思ったが、
実は今やっかいです。






ボクが仕事の度にお店に来て、
仕事が終わる頃に裏口で待たれます(笑)






今日も仕事でお店に行けば、既に見慣れた人物が本コーナーで立ち読みをしている。






さすがに1ヶ月半もしょっちゅう来られたら、店員も恐ろしくなるだろう。





後ろでひそひそ話が聞こえてくるようになった。

そして仕事が終わる頃、
裕也は裏口にやってきた。





裏口から出ると同時に声をかけられる。





「お疲れ、柚」





「…ありがと、裕也」




少し不機嫌なのを隠しながら裕也の隣に並ぶ。



学校終わりに家に帰ってからわざわざ来るらしい。

服装はいつも私服だ。






「…ねぇ裕也、なんていっつも立ち読みしにくるの?
立ち読みだけなら、裕也の家の近くに本屋さんあるじゃん」





そう、裕也の家の周りは意外と便利なことこの上ない。



郵便局、銀行、スーパー、本屋。
学校は小中高大とすべてあり、
保育園や幼稚園も存在する。


ほしいものややれることはほとんどできる、至れり尽くせりな空間だ。




「理由なんて簡単だよ。
柚に悪い虫がつかないように見張ってんの」






……は?




「ー…。裕也、それ間違えるとストーカーだよ…?」



「なんで?
柚を見張ってるだけじゃん。」





いやだからそれがストーカーなんだってばゆーや君(笑)

まさに頭を抱えるのに正当な理由だ。


いや、頭を抱えることに理由なんていらないが(笑)




「…裕也、ガードしてくれるのは嬉しいよ、
でもこういうことは今日限り止めて?
仕事の人たちが怖がってるの。」




「怖がってるって、なんで?
別にその人たちに迷惑かけた覚えもないんだけど?」




鼻で笑いながらの裕也の台詞。




最近の裕也は自分のことしか考えていない気がする。




ボクが切なそうにうつむくと、裕也を取り巻く空気が少し変わった。




「…わかった。
止めるよ。」





「ホント!?」




顔を輝かせながら裕也を見たが、
裕也は不機嫌な顔をした。





その日は特に何もなく、明日も仕事があるからと言って、ボクらは早く解散した。





裕也は不機嫌なままだったけれど。






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