永遠に

□愛してくれた人へ
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 希が10歳の時、桜さんが亡くなった

 突然の報せにまず、脳裏に浮かんだのは希の事だった

 桜さんを尊敬していて、慕っていて、大好きだった希

 どうしているかと心配で、訪ねた俺が見たのは泣く事もなく、呆然としている希だった

 その様子があまりにも痛々しくて、抱きしめた俺の腕の中で希は泣いた

 泣き疲れて、眠った希を渋々、預けて帰ると桜さんからの手紙が届いていた

 丁寧に書かれた文字は少し、丸みを帯びていて、浮かべる微笑みと同じように優しいものだった

 何度も何回も読み返した手紙にはこう書いてあった

 私に何かあったら希を頼む、と

 そして、俺に幸せでいてほしい、と

 人を愛する事を止めないでほしい、人に愛される事を諦めないでほしい、と

 俺が幸せでいる所をずっと、見守っている、と

 ・・・限界、だった

 流れる涙を拭う事もなく、零れる嗚咽を堪える事もなく

 優しくて暖かい人を想って、俺は泣き続けた 
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