宝物庫
□連鎖終着点
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「偽りだったとしても。女性を守ろうとした、その姿勢は立派なものだったのかもしれない。しかし、何故。もう少しだけ、一瞬だけ。冷静になれなかったのか」
静かな法廷に、私の声だけが響く。
「弁護人。……一つ、言っておこう」
私は相手を睨みつける。彼は少し怯んだ様に見えた。
「どれ程の事情がそこにあろうと。罪は、罪だ。それが消えるわけではない」
被告の膝の上で握り締めた両手が。落とされた両肩が。項垂れた頭が。怒り、悲しみ。様々な感情で震えている。
「裁判長」
私は、哀れな相手弁護士へ終了の合図を告げる。
「これ以上は時間の無駄だ。……判決を」
迷いなく、木槌は打ち鳴らされた。
《連鎖終着点2へ続く》