・キャラ設定・

レインがわりとしっかり者で賢いです。だけど恋愛には少し疎いかも・・・?
シェイドはやはり意地悪ですが、後からやや王子らしくなる予定。
最初はシェイド一人がレインに惚れています。あとから両想いに。
初心者なのでかなり駄文になってしまうかも・・・(-_-;)
軽い気持ちで読んで下さいね!





エピローグ:少女の憧れ




ある冬の寒い日のこと、月の国の城下町は、
もうすぐクリスマスだというので大勢の買い物客で賑わっていた。
客のほとんどが家族連れだ。子供たちはみな両親にあれやこれやとプレゼントをおねだりして、幸せそうにキャッキャッと笑っている。
そんな中、先程から一人であるバリケードに張り付いて目をキラキラさせている少女がいた。
少女はこの寒さに裸足で、つぎはぎだらけの服を着ており、見るからに「貧乏」そのものだ。
少女の名はレイン。年は13歳。
彼女が先程から見ているのはパールでできたネックレスだった。
ーなんて綺麗なネックレスなのかしら・・−
レインはしばらくうっとりと見入ってから、ハッと自分を待っている家族のことを思い出した。
ー早く帰って、みんなに夕御飯をつくってあげないと・・・ー
そう思い、一日の針子の仕事で疲れきっているかじかんだ手を自分の息で温めると、急いで帰路についた。

家に帰ると、4人の弟や妹たち、それに病気で寝込んでいる母が待っていた。
レインには父親がいない。彼女が生まれてすぐに死んでしまったのだ。
母親も病弱なため、一家の生活はレインにかかっていた。
レインは幼いころからいろんな仕事をしてきたため、たいていのことはできる。
料理、裁縫、掃除、どれも完璧にこなすことができた。
レインは
「遅くなってごめんね」
というと、すぐに台所に立った。
すると、末の妹のエイミーがやってきて、レインのすそを引っ張った。
「ねえ、お姉ちゃん。」
「どうしたの?エイミー」
レインがしゃがんで優しく聞くと、エイミーがはにかんだように、
「あのね、あたし、クリスマスプレゼントに、クマのぬいぐるみがほしいの。」
と言う。
レインはドキッとした。正直のところ、レインの今の収入では、一家が明日満足に食べられるのかも危うい状態だったのだ。
レインは何気ないように
「お金があったらね」
と言った。
直後のがっかりしたような幼い妹の顔はレインの心にずっしりと傷を与えた。
レインは料理を再開しながら、ポツリとつぶやいた。
「お金が・・・・欲しい・・・」
ーお金さえあれば、もっとみんなに美味しいものをたべさせてあげられるのに、お母様にも、もっといいお薬を買ってあげられるのに、エイミーにも、クマのぬいぐるみを買ってあげられるのに・・・ー
包丁で野菜を切るレインの手に涙が一粒こぼれおちた事を、誰も知らなかった・・・。





第一章:レイン、メイドの道へ・・




それから月日は流れ、レイン15歳の春。
レインは月の国のお城の、とある大広間にいた。
周りにはレインと同じくらいの年頃の少女たちがたくさんいる。
レインは先程から、生まれて初めて入ったお城の広さと、豪華さ、そして美しさに圧倒されっぱなしだった。
ーまるで夢の中にいるみたい・・・ー
だが、夢見心地だけでなく、レインは緊張もしていた。
なぜならレインは今から「メイド採用試験」を受けるのだから。
15年に一度開かれる月の国のメイド採用試験。
合格すれば3年間の見習いの後メイドになれる。
メイドになれば、物凄い高収入が見込めるのだ。こんなチャンスをレインが逃すはずも無かった。
早速申し込みをしたのである。

「次、2210番。」

ふいに大広間に女の人の事務的な声が響いた。
ー私の番号だわー
レインはスッと立ち上がると、奥の方の扉に向って歩いて行った。
ドアノブに手を掛けて立ち止まる。
ーここで成功すれば、家族みんなに楽な生活をさせてあげられるのよ。何としても成功しなきゃ・・ー
レインは深呼吸する。
そして、自然な笑顔を浮かべると、思い切って中に入っていった。
メイド採用試験で行われるのは、面接、それに簡単な裁縫や料理の実技試験だった。


はたして、その年の3月、レインの家に一枚のハガキが届いた。
そこには・・・

ーレイン殿のメイド採用試験の合格を通達しますー

レインが涙を流して喜んだのは言うまでも無い。
その夜、レインの家ではお祝いパーティーが開かれた。
近所の人々が、レインの合格発表を知って駆け付けてきてくれたのだ。
やはり貧しい人ばかりだったので、質素なパーティーにしかならなかったが、それでもみんなが精いっぱいのお祝いをしてくれて、レインはとても幸せな気分だった。
お祝いの途中、レインと幼馴染の女の子たちがレインの方にやって来た。
そのうち、レインの一番の親友であるジェーンが、何やらニヤニヤしながらレインに話しかけて来た。
「ねえ、レイン。私たちさっきから話していたんだけど、あなた、メイドになるってことは、お城に住み込みで働く事になるのよね?」
レインは、ニヤニヤしている親友を不審に思いながら
「そうだけど・・?」
とおずおずと言った。
「じゃあさ、レイン、あのお方に会えるってことよね」
「あのお方・・・?」
ジェーンがレインの肩をバシッと叩いた。
「やだ、もう。決まってるじゃない。シェイド王子よ。」
シェイド王子、という言葉が出て来たとたん、周りの少女たちがキャーっと騒ぎ出した。
「ま・・・まあ、もしかしたら会うかもしれないけど・・・?」
「やあね、レイン。何その反応。」
他の少女たちも次々と話し出す。
「そうよ、そうよ。シェイド王子と言えば、みんなの憧れの的じゃないの。」
「容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群・・・」
「おまけにクールで、シャイで・・・」
「キャーっ・・・」
少女たちは顔を真っ赤にして興奮している。
みんなで妄想の世界に飛び立ってしまった。
レインは一人取り残されて、どうすればいいのか分からずオロオロしていた。
レインはシェイド王子に会う事なんて全く考えていなかったのだ。
ただ、メイドになれば高い給料がもらえることしか頭になけて、そのためだけにメイド採用試験も受けたのだ。
妄想の世界に旅立ってしまった娘たちを見かねて、その母親たちが自分の娘をそれぞれズルズルと引っ張っていった。
「すまないねえ、レインちゃん。
この妄想娘のことは気にしないでおくれ。」
母親の一人が苦笑しながら言った。
「いえ、そんな・・・」
レインは手を振りながら言う。
そして少しはにかんだような笑みを浮かべて、
「みなさん、今日は私なんかのためにこんな素敵なパーティーを本当にありがとうございました。」
と言った。

その日の夜、レインは自分の部屋から窓の外の月を眺めていた。
月の国の象徴である月は今夜は満月で、まばゆいほどの月の光にレインは目を細めながら、ぼんやりと少女たちの言葉を思い出していた。
「シェイド王子・・・かぁ・・」
レインはそれまで一度も恋をした事がなかった。いや、出来なかったというほうが正しいかもしれない。
幼いころから一家の生活を守っていかなければならなかったレインはあまりにも忙しすぎて、恋などする余裕もなかった。
周りの少女たちが恋だの男の子だのキャーキャー言っているときも、レインはただお金を稼ぐ事しか、家族を守る事しか頭になかった。
だから、少女たちの憧れであるシェイド王子のことも今まで一度も気にした事はなかったけれど、今日のみんなの話を聞いて、レインは少し気になったのだ。
ちょうどその頃、月の国のお城でも、一人の青年が月を見ていた。
深い紫色の髪を夜風にたなびかせて、夜の空のような青い瞳で月を見上げるその青年は、フーッと静かにため息をついた。
その日一日の公務で頭は疲れ切っていたが、月を眺めることで、青年はかなり癒されていた。
ー今日の月は、やけに明るいな・・ー
そんなことを思いながら、青年は気持ち良さそうに目をとじた。夜風を感じながら。

その晩、シェイド王子とレインが同じ時間に同じ月を見ていたという事実は、もちろん「月」だけが知っている。

翌朝、目を覚ましたレインは家族との朝食を終えると、昨日まとめておいた荷物を持って家を出た。
出発際には家族みんなが家の前で見送ってくれた。
これからは、レインもお城で暮らす事になるのだ。
およそ14年間ずっと一緒に暮らしてきた家族と離れるのはすごく不安だったし、寂しい気持ちももちろんあった。
でも、
「永遠の別れじゃないのよ、お母様。
暇ができたらいつでも帰ってこれるんだか
ら。」
 ーそうよ、いつでも会えるんだものー
レインは涙を流す母に、そして自分自身にも言い聞かせるようにそう言った。
その日は快晴で、温かい春風の吹く穏やかな日だった。

「やっぱりお城っていつ見ても圧巻だわ・・

城に着いたレインは思わずそう独り言を言った。
今レインは、メイド採用試験の時に来たあの大広間にいる。今日はここで、新メイドたちの歓迎パーティーが開かれるのだ。
周りでは、今日の主役の新メイドたちと、現メイドたちが、出された飲み物や食べ物を口にしながら談笑している。
レインは大広間の壁に施された壮大な彫刻に見入り、ホーッとため息をついた。
「そうかしら、見慣れてくるとなんて事はないわよ。」
突然背後から聞こえた声にレインはびっくりしてうしろを振り向く。
見ると、そこには30代くらいの綺麗な女性が立っている。黒い髪に、高い身長、気さくでうちとけやすそうな笑顔をたたえている。
その女性がまた口を開いた。
「それに、掃除するのも大変だしね。」
「・・?・あ、あの・・あなたは・・?」
「あっ、私?私はジェーンよ。シェイド王子つきのメイドなの。」
レインの頭に2つの驚きが起こった。
1つは、目の前のこの女の人が自分の親友と同じ名前だということ。そしてもう1つは、シェイド王子専属のメイドだということだ。
ーたしか、王子付きのメイドは、メイドの中 でも1番優秀で、生まれも貴族や王族の人 しかなれないのよね・・。それに、給料も ケタ外れていいって聞くわ。
レインはジェーンを尊敬のまなざしで見てから、あわてて挨拶をした。
「あの、私、新入りのレインといいます。どうぞよろしくお願いします!!」
ジェーンは、レインの柔らかい、優しい笑顔に息を飲んだ。
ーこんなに人を温かい気持ちにさせる笑顔を持つメイドを、この数10年間で初めて見たわ・・」
そうしてすぐにレインを気に行ったのだった。
もしこの時、レインがジェーンと出会っていなかったら、レインとシェイド王子が出会う事は決してなかっただろう。
この時から、レインの運命はシェイド王子のほうへ確実に引き寄せられていくのだった。

その日の午後は、メイド見習いの仕事の説明があった。見習いは、3年間ずっと同じ仕事を続ける。
仕事の内容は、午前と午後に一回ずつお城じゅうの掃除をして、食事の時間の前には先輩のメイドたちの料理を手伝い、空いた時間には、先輩の雑用をひきうける。
次の日から早速始まったその仕事はなかなかハードなものだった。
レインもかなり忙しく、3か月たってもずっと家に帰れずにいた。
心身ともに疲れる仕事だが、レインは充実感を味わっていた。
毎日掃除したり料理を作ったり雑用で買い物にいったりして駆け回るのはすごく楽しい。
何より、仲間のメイドたちとたわいのない会話をして笑い合う事が。
ルームメイトのハンナともすぐに仲良くなった。

それから時はせわしく流れ、3か月たった時、王子付きメイドのジェーンはある決心をした。
後にレインとシェイド王子の人生を大きく変える決意を。

夜、シェイド王子の自室をコンコンとノックする音が聞こえた。
シェイドは書類に走らせていた筆を止めて
「誰だ?」
と聞く。
「メイドのジェーンです。・・お話があるのですが。」
こんな遅くに珍しいなと思いながらもシェイドは
「入れ。」
と一言言った。
ガチャッとドアが開いてジェーンが入って来る。
シェイドは椅子に腰かけたままジェーンの方を見た。
ジェーンはシェイドの前で立ち止まる。
しばらくの沈黙の後、シェイドが口を開いた

「それで、話って何だ?」
ジェーンは少しためらってから、
「・・実は、私、今日限りでメイドの仕事を辞めさせていただきたいのですが・・」
シェイドは一瞬固まったが、またいつものように平静を保って
「どうしてだ?」
と理由をうながした。
「私、・・・結婚する予定なんです。」
ジェーンは少し顔を赤らめながら言った。
シェイドは納得したように
「そうか、分かった。」
と了承する。
ジェーンは照れくさそうに
「シェイド王子のメイドになれて、本当に幸せでした。」
と言った。もちろん子のシェイド王子にねぎらいの言葉など期待してはいない。
ー私がいなくなっても、きっと何とも思わないんだろうな・・ー
ジェーンは何となく寂しい気持ちになりながら、
「それでは、さようなら。」
と言って部屋を出て行こうとした。
ドアに手を掛けた瞬間、後ろから言いにくそにごもごもという声で
「・・いままでご苦労だった。」
と聞こえた。
ジェーンは驚いて後ろを振り向いた。
見るとシェイドは照れくさそうに目をそらしている。ジェーンは胸が熱くなるのを感じながら、
「シェイド王子から、そんな言葉が聞けるなんて。」
と、笑いながら行った。
シェイドは目をそらしたまま、
「幸せになれよ。」
と言った。
ジェーンの目に涙があふれてくる。
ずるい。辞める間際になってこんな優しい事を言ってくれるなんて。
今までも、ポーカーフェイスで冷徹な一面だけじゃなくて、こんなところも見せてくれたら、どんなにか楽だったのに・・。
ジェーンは気さくな笑顔を見せると、
「必ず幸せになりますよ。」
とはっきりと言った。
シェイドもうなずく。
そうして再びドアに手を掛けた時、ある事を思い出してまた後ろを向いた。
「そういえば、次のメイドの事ですが・・、私の推薦で、異例の若さの子に決まりました
。月の国の歴史の中で、最年少の王子付きメイドのたんじょうですよ。 それに、珍しく庶民出身の子です。」
シェイドがふと顔を上げた。
「・・一般市民か。」
「ええ。でも、すごくいい子なんですよ。可愛らしくて、優しくて。・・・シェイド王子も惚れちゃうかも・・」
ジェーンは面白そうに言った。
シェイドは顔をしかめると
「そんなわけないだろう。」
ときっぱり言った。
ジェーンはふふっと笑いながら、ドアを開けると、
「レインをあんまりいじめないようにしてくださいね。いくら可愛いくても。」
というと、部屋を出ていった。
残されたシェイドは、
「・・・レイン・・?」
と、初めて聞く名前を何となく呟いた。


「あーあ、今日も疲れたわ・・」
レインは一日の仕事を終え、自室でベッドに入ろうとしていた。その時、
コン、コン。
誰かがドアをノックする音が聞こえる。
「一体誰かしら?こんな夜中に・・」
レインはふしぎに思いながらも歩いて行ってドアを開けた。
「はーい、どなたですか?」
ガチャッ。
「・・・ジェーン様!」
「こんばんは、レイン。ちょっと話があるんだけど、入ってもいいかしら?」
「ええ、もちろんです。さあ、どうぞ。」
レインは珍しい客人が自分の部屋を訪ねて来たことに驚きながらも、ジェーンを部屋の中に入れた。

それから一刻後・・・
「え〜〜〜っ!!??」
レインの絶叫が、部屋中に響き渡った。
ジェーンも思わず耳をふさいでいる。
レインは慌てふためいていた。
「そ・・そんなっ!だって私、メイドの見習いになってから3か月しか経ってないんですよ!それなのに・・・そんな責任重大な仕事なんて、自信がありません!!」
「大丈夫よ。確かにあなたはすごく若くて経験もないけど、レインならきっと上手くやっていけるわ。そんな気がするもの。根拠は無いけど・・・。女の勘ってとこね。」
そういってジェーンはウィンクして見せる。
「でも・・・」
「王子付きのメイドは、メイドの中でも最上級の高収入よ。」
その言葉を聞いた瞬間、レインは顔を上げた

「ぜひ、やらせて下さい!」
「じゃあ、決まりね!」




第二章 シェイド王子との出会い




翌朝早く、レインはシェイド王子の部屋の前に立っていた。
初めてのメイドの仕事、ウェイク・アップ・コールをするためだ。
レインはホーッと深呼吸をする。
目の前の扉はがっしりとしていて重厚で、歴史を感じる。
その取っ手にそっと手を掛けると、レインは未知の世界に入り込むような気分で扉を開けた。
ギーーッ

目の前には広くて、でも本以外あまり物は無くシンプルな部屋があった。
清潔感も漂っている。
大きい窓にはカーテンが閉められているので
、部屋の中は薄暗い。
レインは思わずその場に立ち尽くした。
ーこの部屋・・・、私の家よりも広い・・?−
それは認めたくはないが、確かな事実だった

レインは少し苦笑すると、気を取り直して目の前のカーテンを開けた。
部屋中に朝のまぶしい光が差し込む。
外の木々の若葉がきらきらと輝いて見える。
レインはほんの少しの間その景色に見とれていたが、自分の仕事を思い出しハッとして周りを見渡した。
ーシェイド王子は、どこ・・?−
そして、部屋の左の奥の方にベッドが見えた

部屋は結構奥行きがあったので、レインが部屋に入った瞬間は見えなかったのだ。
ー本当にすごい広さね・・ー
レインはそう思いながらシェイド王子の方へ歩いて行く。
そして、もうすぐでシェイド王子の顔がはっきり見えるという距離まで来た時、レインは少し緊張した。
レインが生まれ育った月の国を、いずれは治めることになるであろうシェイド王子に初めてあうのだから、それは当然のことかもしれない。
レインは緊張しながらシェイド王子の近くに歩み寄り、その顔を見た。

ー街中の女の子たちがキャーキャー言ってたのもうなずけるわね・・−
レインは冷静にそんなことを考えた。
確かに、その顔は並はずれて整っている。
レインは少しその顔を眺めると、早速仕事を始めた。
「シェイド王子、朝ですよ。」
はっきりとした声で言う。
シェイド王子は少しピクっと動いたが、起きない。
もう一度、今度は大きめの声で
「シェイド王子、起きてくださいっ!」
という。
だが、やはり起きない。
レインは、少しためらいながらもシェイド王子に顔を近づけると、鼓膜が破れないていどの大声を出した。
「シェイド王子、起きてくださいっ!!」
ハッとシェイド王子が目を開けた。
目の前にいるレインを一瞬驚いた表情で見る

レインは、顔を近づけすぎたことを後悔した
。もう少しでシェイド王子の息がかかりそうなくらいの距離だ。
最初は顔を遠ざけようとしたが、シェイド王子の深く青い瞳に吸い込まれて目を離せなくなった。
深く、夜の空のような瞳だ。
それでいて、どこか研ぎ澄まされている。
さっき寝ていたときは、ただかっこいいと思ったが、今こうして目を開けていると、なんだか雰囲気が違う。
向こうもこっちをじっと見ているので、レインもその目を離せなかった。
ーシェイド王子ってまだ18歳のはずなのに、なんでこんな深い瞳をしているのかしら・・
・?ー
そんな事を思いながらもレインはだんだん頬が上気してくるのを感じた。

時は戻って、レインがシェイド王子に第一声を掛けた時。
「シェイド王子、朝ですよ。」
シェイドはいつものジェーンとは違う若々しい声に、ぼんやりと違和感を抱いた。
ー変だ・・。一体誰だ?−
これは夢か、と思いながらまた眠りに入ろうとした時。
「シェイド王子、起きてくださいっ!」
さっきより大きな声がする。
シェイドはそこではっきりと目を覚まし、全てを思い出した。
ーそういえば、今日からジェーンはいなくなって新しいメイドがくるんだったな・・・。
名前は確か・・・−
「シェイド王子、起きてくださいっ!!」
突然耳元でした大声にシェイドは思わず目を開けた。
その瞬間、目の前の一人の少女に息を飲んだ。
ー天使が、俺の部屋に迷い込んできたのか・・
?−
普段にのシェイドでは考えもしないようなことをその時ふと思ってしまったほどだ。
空のように鮮やかな水色の髪をもち、澄みきった朝の湖のような翡翠色の瞳をした少女が、じっとこっちを見ている。
朝の光に包まれたその姿は、本当に天使としか言いようのない美しさだった。
シェイドはしばらくぼんやりとその顔に見入ってから、やっとのことで声を出した。
「お前は、レインか・・?」
目の前のレインと言う少女はハッとしたように、
「・・はい。」という。
瑞々しく、透き通った声だ。
そして、少しはにかんだような優しい笑みを浮かべて、
「これから、よろしくお願いします。」
と言って一礼した。
シェイドはその笑顔にまたもや引き込まれてしまった。
後にシェイドはこの笑顔に何度も癒され、そして恋をする事になる。
だが、その時はポーカーフェイスを保って、
「ああ。」
とだけ言ったのだった。


それから数刻後・・・
シェイド王子は自室のソファでわずかな休憩時間に本を読んでいた。
ふと隣を見ると、新しい王子付きのメイド、レインが地べたに座って楽しそうに林檎の皮をむいている。
レインの小さな手のひらの中で、真っ赤な林檎がクルクルと踊っている。
シェイドがちらっとレインを盗み見ると、ニコニコと楽しそうにしている。
シェイドはまた本の方に視線を戻すと、

「なにがそんなに楽しいんだ?」

とぶっきらぼうに言った。
レインが驚いてこちらを振り向く。
だがまた林檎に向き直って言った。

「私、楽しい楽しいって思ってたわけではありません。 でも母が昔よく、こう言ってたんです。 「笑顔でいれば、自分も相手も幸せになって、きっといい事があるよ」って。
だから、できるだけ笑顔でいようと思ったんです。」

そう言ってレインはシェイドに花のような笑顔を見せる。
シェイドの胸がまた高鳴った。
ーこの笑顔は、幸せにするよいうより・・−
だがきっとレインは気付いていないのであろう。シェイドにほんのりと芽生えた気持ちを

シェイドは、これから毎日この笑顔にドキドキさせられるのかと思うと、自分の身がもつかどうか心配になるのだった。


ここまで読んで下さった方がいたら、ありがとうございました。

すみません。続きを書こうと思ったのですが
大事な親族が亡くなってしまい、精神的にショックを受けているので、立ち直るまで執筆出来ないと思います。申し訳ありません。

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