Sweet Toy

□Twin's Birthday
1ページ/17ページ


柄にもないと思う。
本気で走った。もっと早くここに来ればよかった。そう思わなくもなかったが、抜け出せる時間なんて限られていたから。家を出たのが5分前。そろそろ家に戻らないと家族に怪しまれる。
土で汚れた手を隠せるだろうか。そんな心配をしながらひたすら走った。
愛しい自分の片割れがいるあの家に向かって。
高校生にもなって家族で誕生日パーティーなんてするの?
何度友人に言われた事だろう。そんな友人も俺に気を使って、毎年昼に俺の誕生日を祝ってくれるようになった。口は悪いが本当に良い奴等だと思う。
家族が大好きで、特別な事があれば必ず家族で祝って喜びを共有した。いつも忙しくしている両親もこういう時は仕事をさっさと切り上げて家族の輪の中に必ずいた。本当に幸せな家族だと思う。
誰かの誕生日にクリスマス。誰かが何かの賞を取った時、いつもテストで平均30点くらいしか取らない俺が奇跡的に80点を取った時。入学祝いに卒業祝い。望月家には特別な記念日が沢山あった。
今年、もうすぐ高校3年生になる俺達がこうやって全員で自分の誕生日を祝って貰うのはこれが最後だろう。…だって佐倉は来年の今頃には東京にいるはずだから。
まだ合格も…受験すらしていない状態だけどそれは確実であり、絶対だと思う。佐倉が受からなかったらあの大学に誰が受かると言うのだろう。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ