Sweet Cage

□【6】夏休み-転-
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千重と別れてから知らない街をただひたすら歩いた。ホテルに泊まる金なんか持ってきている訳もなく、どうしようと言う事しか思い浮かばない。小枝さんの所に行く勇気なんか無いし、行く気にもならない。
全てがなんだかどうでも良くなってきて、適当に裏路地に入ってしゃがみ込む。一刻も早く村に帰りたい。そう思って荷物をぎゅっと抱きしめた。
「君…」
突然声を掛けられて、ビクリと体が震えた。顔を上げると30代後半のスーツを着た男が経っていた。酒を飲んでいたのか、アルコールの匂いが微かに鼻に付く。
「具合でも悪いの?こんなに遅い時間に一人で…」
「いえ、大丈夫です」
「ご家族の方に迎えに来てもらいなさい。それまで一緒に居てあげるから」
男の言葉に、今日村から友人の家に遊びに来た事を告げた。家出だと思われて警察に連れて行かれても困る。友人に急用が出来て、家に行けなくなったと嘘を吐いた。…すべてが嘘と言う訳ではないんだけど。
「ここであったのも何かの縁だろう。助けてあげるよ」
「本当に、大丈夫ですから」
「でもずっとここにいると補導されるよ」
「補導…?」
「おまわりさんに注意されるってこと」
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