Sweet Cage

□【4】夏休み-起-
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待ちに待った夏休みになった。
受験生の身であっても、学校が休みになる事はみんな少なからず嬉しいのだろう。ここ数日浮足立った状態だった。
それは当然俺にも言えた事で。ただ、夏休みが嬉しいとか、そんな理由ではなくて八月に小枝さんの家に行く事が決まっていたから。久々に会えるのが嬉しくて、千重に毎日のように小枝さんの話をしていた。千重はそれに呆れもせず、その話を聞いてくれていた。普通だったら人の惚気話なんて聞いていて楽しいものではないだろうが、ずっと遠距離だった俺を気遣ってかそんな様子は見せなかった。…コイツ、本当にいい奴だって思う。
それはそうと、夏休みに入り、俺は毎日のように千重の家で勉強をしていた。…勉強を教えていた、という方が正しいだろう。
店の手伝いは長女の佳乃子が俺に代わってしてくれている。高校は村に一つしかなく、俺の成績なら問題なく受かる。内申も良いから、多分推薦で行けるだろう。進路指導の時にそんな話を聞いた。両親にもそれを伝えたが、受験生と言う立場なんだから勉強しておけと強く言われてしまった。…世間体的にも受験生の俺が店にいるのはあまり良くないのも分かるため、店の手伝いは佳乃子に言われた時だけ裏でこっそりしている。
「そー言えばさぁ。たまたまなんだけど、めーちゃんが松本行く日と俺の合宿の日程が被ってる日があるんだよね。…あ、ここ教えて」
「ここはさっき教えた問題の応用な。公式は同じだから…ここをこう。…で、日程いつだっけ」
「お!?本当だ。って事は…こうして、こう?」
「そう。そのまま計算してみろ」
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