Sweet Cage

□【3】『親友』
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「俺、松本市の高校受けようかな」
三年の夏、親友の千重は突然そんな事を言い始めた。当然、同じ高校に行くのだろうと思っていたのに。
しかも…お世辞にも成績が良かった記憶がない。わざわざ松本市まで出て、三流の高校に通うのか。それはどうなのだろう。今から必死に勉強すれば…どうにかなるかもしれない。飲み込み自体は悪くないから。
「なんでいきなり…あっ。…もしかして、俺のため?」
「…違ぇし。ほら、田舎暮らしに飽きたって言うか…」
それが嘘だと言うことは直ぐに解った。何だかんだで田舎の空気が好きだと前に言っていた。一緒に山に登って星を見たことも何度もある。
「…同じ高校に行かないのか?」
「落ちたら行くよ。大学までエスカレーター式の学校があってさ…良くない!?一回で済むんだぜ、受験」
「…そうだけど。良いのか、両親残して…」
「大丈夫だろ。東京いる時より仲良くなってるし、俺の受験終わったら子供作るとか恐ろしい事言ってるくらいだし」
苦笑しながら何でもないように言う千重に、溜め息を吐いた。村の外に出れない俺に気を使って言ってくれてるとしか思えない。
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