Sweet Sweet
□【01】甘ったるい幻想と、ニガくてグロい現実。【前編】
1ページ/20ページ
僕の実家は、ド田舎で和菓子屋をやってる。
ちょうどこの時期なら、水ようかんとか、水まんじゅうがおすすめ。
父さんの作るお菓子は、素朴だけど、とても美味しい。
父さんの飾らない人柄が表れてるなぁと思う。
母さんは、父さんの手伝いをいつもしてる。
あと、子だくさんだから下の兄弟の面倒をみたりと忙しい。
双子の弟の柏は、父さんの和菓子屋をオンラインで運営してて、結構繁盛してるらしい。
僕は機械音痴だから、よくわからないけど。
今年、僕は大学生になった。
僕の通う、『聖華大学』という大学は、実は日本屈指の名門大学で、
僕が村を出る時は村長さんが挨拶しに来たほどだ。
父さんは『トンビが鷹を生んだようで……』なんて言って照れていたけど、
柏は『そんなアタマ良いならいっそ東大行けばよかったじゃん』などと言ってたっけ。
東大も考えなくはなかったけれど、いくら国立大とはいえ結構お金がかかる。
その点聖華は、特別奨学生の選抜試験に受かれば、4年間タダ同然で勉強できる。
聖華を選んだのは、そういう理由だった。
それから、僕の専攻してる、『天文学』を専門的に学べる大学は少なくて、
東大や聖華、あとは西日本にいくつかあるくらい。
今は、毎日大好きなことを勉強できて幸せだ。
大学の友達は、みんな賢くて優しい。
一緒に研究テーマの話や、将来の夢とか、そんな話をする。
思えば、僕の生活の中でひとつだけ異質なのは、『彼』だった。
翔斗、ショート君。
彼は最初友達だったのに、もう、友達とは呼べなくなってしまった。
というか、もう僕にはわからない。友達がなんなのか、恋人が何なのか。
彼と神社の裏でしたことが、僕には後ろめたくて仕方がない。
自分だけ何か、大人になってしまったような、そんな罪悪感が頭を満たしていた。