Sweet Sweet

□【1】夏祭り
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佐倉と出会って初めての夏。周りは受験生に夏休みなんかないと慌ただしい時期だけど、俺にはその自覚もなかったし、受験する気もなかった。
「え?夏休み?…実家の手伝いしに帰るよ」
楽しみにしていた夏休みの予定はこうもあっさり打ち砕かれた。今まで夏に女がいなかった訳じゃねぇけど、今まで会った誰よりも好きな佐倉と夏の思い出を作る事を楽しみにしていた。7月はテストとレポートがあるって言っていたからそれまでの我慢だと今の今までは思ってた。
7月末からは休みだって聞いてたから8月の花火や祭り、海に関する予定や場所を真剣に考えていたのに。金が掛かってもいいようにバイトのシフトも増やして貯金してた。…そりゃ勝手に佐倉が夏休みはずっと東京にいるものだと思い込んでた俺も悪いんだけどさ…。せめてお盆に帰省、とかなら東京生まれの俺でも理解できる。
「い、いつから?いつから帰るんだ、実家に…」
「8月の一週目の土曜日だよ。明後日だね」
「そんな…何でもない事みてぇに…」
よくよく考えれば夏休みに実家に帰るってだけの話なんだけど、俺としては大問題だ。
「報告遅くなってごめんね…。聞かれなかったし、ショート君は受験生だから忙しいのかと思ってたから」
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