Sweet Adult

□wisteria violet -epirogue-
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これで、俺と、アキラと、
そして花林という少女の間に起こった物語は、終わり。

え?
アキラがどうしても子供と会いたがらなかった理由?
それはまた、別の機会に。
そうだな、今は、アキラの出自に深く関係する事情、
とだけ言っておこうか。

「…弾季さん」
話し終わると、隣に美しくも恐ろしい笑顔があった。
「…な、なに?悟己?」
「…どうせ、その花林ていう子、
好きだったんでしょう」
「む、昔の話だからっ」
「アキラさんの子供産んだ人が好きだったとか、複雑っスね…」
翔斗が呆れたような口調で言った。
「あっ、そうだ、中唐寺花林て、
どこかで聞き覚えがあったと思ってたんだ」
一緒に話を聞いていた幹部の一人が、
立ち上がって冷蔵庫の冷凍室をあけると、
小包みを取り出した。
「これ、さっき届いたんですが…」
「お中元?」
翔斗が受け取ってまじまじと見た。

「……これ、差出人が……」
「『中唐寺花林』になってますね」
悟己が俺をジロッと睨みながら言う。
「ま、毎年届くんだよ…」
「あ、手紙入ってますよ!」
翔斗が勝手に手紙の封を切る。
「だぁあ、勝手に開けるな!」
「ええと…拝啓 御手洗弾季さま」
そして勝手に音読しだすのだった。
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